「代書 服部」の立て看板

「小津安二郎/静かな反戦」(ETVスペシャル、2003年)を学生たちと観る。小津安二郎の映画に籠められた「反戦」の意思をめぐって、吉増剛造が聞き役に回り、吉田喜重が語るという構成である。その中でいわば「平和」の象徴として取り上げられた『東京物語』(1953年)のなかのある路地のシーンが非常に印象的だった。「代書 服部」の立て看板が大写しになる。その背後にはもう一軒の代書屋の立て看板も小さく見える。

「代書」。今でもわずかに、行政書士事務所や司法書士事務所の看板に「代書」が生き残っているようだが、「代書 服部」という看板を見た時には、イタリアはナポリ下町の代書屋マリオのことや、プライベートな手紙の執筆を代行する代筆屋のイメージがまず浮んだ。あの『モーターサイクル・ダイアリーズ』(2004)も撮ったブラジルのウォルター・サレス(Walter Salles)監督の『セントラル・ステーション』(1998)に登場する代筆屋(ドーラ)のような。

ところで、話は小津映画からはまったく逸れるが、「代書」ということで、落語の「代書屋」を聞きたくなった。履歴書を代書する噺である。YouTube柳家権太楼の「代書屋」が聞けた。不眠症のI君、これでも見て、一笑いしてくださいな。


落語「代書屋」柳家権太楼


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