チャトウィンのような旅人でなくとも、誰しも一日に数回は、こんなところで一体何やってるんだ? と怪しむのではないだろうか。そんなことはない、という人はよっぽど幸運の星の下に生まれたか、天性の天然なのだろう。チャトウィンが自分で出した答えは、「正しい死」に至る準備をしている、というものだった。「正しい生」とは、したがって、そのことに精神を深く目覚めさせるための準備体操のようなものだということになるだろう。チャトウィンのような旅人ではない私にとっても、それは正解だと直観される。ただし、ちょっと正しすぎる気がしないでもない。