人生

Market Street

San Francisco, October 29, 2004 人生観の外にばかり人生が積もっていく 山本博道『憧れは茜さす彼方』(ワニ・プロダクション、1977年)より

たった三日間しか出現しない町に生きる者たち

嬉しいことに、『見世物学会』のウェブサイトに掲載されている、坂入尚文さんの「まだ先へ」と題した不定期連載エッセイが久しぶりに更新されていた。3.11以降、二年近く更新されず身の上を案じていたが、その後も「街道」ならぬ「間道」を行く一人旅を続け…

ガタロさん、カッコいい

捨てられしものを描き続けて ―“清掃員画家”ガタロの30年― 再放送2013年3月12日(火曜)。

夢に深く埋もれ

若松孝二 ---闘いつづけた鬼才 (文藝別冊/KAWADE夢ムック)

うたかた

忘れかけた面影 日々の泡 (新潮文庫) うたかたの日々 (ハヤカワepi文庫) 新潮国語辞典

黄昏の劇場

バタバタバタ、ステテコにランニングシャツ姿、サンダル履きの小父さんが私の左脇を走り抜けて行った。黄昏時、仕事を終え、職場から最寄りの地下鉄澄川駅に向かう緩やかにカーブし、わずかに下る道路の歩道を、いつもの癖で異国の見知らぬ町でも歩くような…

さざ波

支笏湖 ある晴れた日曜日の午後、それまで鏡面のように静かだった湖面に、にわかにさざ波が立ちはじめた。風が出てきたのだ。陽光に煌めくさざ波の上に水上自転車に乗った一組の男女の小さなシルエットが見えた。かなり沖に出ていた。二人は岸辺に戻ろうとし…

間道を行く、坂入尚文さんの旅

間道―見世物とテキヤの領域 カバーのイラストは坂入尚文さんが企画し、1994年にパリで開催されたイベント「縁日風景 '94–PARIS」の際にチンドン屋さんが街角で撒いたビラの表と裏。 坂入尚文(さかいりひさふみ)さんは1947年生まれ、東京芸術大学彫刻科を中…

目は何のためにあるか

五十歳を過ぎて、本を読むために目を使うなんて馬鹿げている。目には他に使い途があるはずだ。世界にはもっと目で見るべきものがあるはずだ。一理あるようなないような極論であるが、そう豪語したのは百鬼園先生だったかな。記憶は覚束ない。他方、九十歳を…

なずな

asin:4087713776 表題の「なずな」に惹かれて本書を繙いた。 なずな(薺)と言えば、もう何年も朝の散歩コースにある斉藤さんのトウモロコシ畑の隅っこに毎年生える薺を定点観測のように見続けてきた。ぺんぺん草とも呼ばれるありふれた目立たない草の一種で…

島尾敏雄と相馬焼

asin:4309018769 島尾敏雄は相馬焼の湯呑みを愛用していたという。私の祖父も、あの大きな二重の作りの湯呑みを愛用していたことを思い出した。幼かった私はその側面に穿たれた穴に得体の知れぬ怖さを覚えた。 おとうさんの故郷は福島県相馬郡小高町で、江戸…

終わりのない誕生日:ヴァルター・シュピース(Walter Spies, 1895–1942)

ヴァルター・シュピース(Walter Spies, 1895–1942) asin:4892570435 シュピース曰く、 僕にとって人生のすべては終わりのない誕生日です! これには二通りの意味があります! ひとつは毎日生まれ変わるような感覚。もうひとつは、僕が望むと望まざるとに関…

幻の St. Point:a journey to the next world

Port of Aden (around 1910). Ships lying off Steamer Point at the entrance to the modern inner harbour アルチュール・ランボー縁(ゆかり)の港スティーマー・ポイント(Steamer Point)。この古い絵葉書ではセント・ポイント(St. Point)と記されて…

揺れる海上、揺れる人生:転身と抵抗の記録

島の青年になったひとりの若者の転身と抵抗の記録。彼の滾る血潮が七島灘に映る。 稲垣尚友・文/大島洋・写真『海上の集落−−薩南諸島トカラ』(ナツメ社、1979年4月、asin:B000J8HXF8)。大島洋の写真はカバー写真を入れて105点。 写真・大島洋(24頁) 海…

アラゴー通りのマロニエ

asin:4901477765 本書は、Robert Doisneau.– A l'imparfait de l'objectif, sourvenirs et portraits の全訳である。 訳者の堀江敏幸氏は、原書の表題に使われた《imparfait》(不完全な、半過去形)に写真家ドアノーの「本質」を見ている。 …表題の《imparf…

今こそ歌うべき時

ストラスブール在住の小島剛一さんから便りがあった。フランスでも連日、日本の地震と津波による被害の様子と原発事故の経過が大きく報道されている。そんななか、3月25日に当地で予定されている日本の歌を中心とした合唱コンサートの開催を危ぶむ声が聞かれ…

花の死

2011年1月1日、愛しのハナ(花)は死んだ。14歳だった。風太郎が死んでひと月たった2009年3月はじめに出会った。メレ子さんが青森で「わさお」に出会ったように(→ イカの町で出会ったモジャモジャ犬「わさお」)、私は札幌で「わさこ」ならぬハナ(花)に出…

てめえ自身の中に開くべき花

その日のうちにやらねばならぬ仕事がない場合には、私は五時を過ぎたらすぐに帰る。用事もないのに、グズグズしていることを私は好まない。同様に私は、酒の席でのサラリーマンの話題が、いわゆる人事問題となりがちなのも好まない。酒はやはり「両人対酌す…

remember you must die

かつて日本を捨てたT女史は、演劇的に安易に陶酔して自死に向かいがちな日本人の心性に苛立って、死ぬ前にせめてシェイクスピアが駆使した語彙くらい駆使して死にたい気持ちを表現してよね。それからでも死ぬのは遅くないでしょ!と豪語した。しかし、そん…

途方に暮れ、生きていることの美しさに心奪われて

アンリ・カルティエ=ブレッソン写真集成 ブレッソン(Henri Cartier-Bresson, 1908–2004)によるル・クレジオ(Jean-Marie Gustave Le Clézio, 1940–)25歳の時のポートレイトを見て、軽い衝撃を受けた。この繊細そうな青年はちょうど40年後の雪の札幌でまる…

年数では計れない長さ

近藤商店の前の歩道で雪かきをしていたおばあさんに尋ねた。「お店をはじめて何年になりますか」「長いねえ」「二十年、三十年」「いや、もっと長い、、」おばあさんは背筋を伸ばして空を見上げた。「なんでそんな馬鹿なことを聞くんだ」とはおばあさんは言…

ヴェルレーヌの余白に en marge de Verlaine たこ八郎の呟き

たこ八郎(1940–1985)がヴェルレーヌ(Paul Marie Verlaine, 1844–1896)の詩句を呟いたという逸話が伝えられる。はじめてそれを聞いた時、意外ではなかった。むしろ腑に落ちた。 たこ八郎は、元全日本フライ級チャンピオン斉藤清作である。現役時代カッパ…

突然、炎の如く

ある日、散歩から戻ると、郵便受けに一枚の葉書が入っていた。十数年来の付き合いのあるMさんからだった。付き合いといっても、年に数回、仕事上の用件で会い、仕事の話をするだけだった。個人的な話はほとんどしたことはなかった。でも、お互いにどこか仕…

小さなお年玉

コンビニでホットな緑茶を買ったら、顔見知りのレジのおばさんが、「はい、これ」と言って北海道ミルクキャンディーを一個くれた。試供品とは分かっていたが、「わあ、お年玉ですね!」と言ったら、おばさんは「そういう言い方もできるか」と言って大笑いし…

時間をまとう

デザインの風景作者: 永原康史出版社/メーカー: ビー・エヌ・エヌ新社発売日: 2010/04/12メディア: 単行本(ソフトカバー) クリック: 8回この商品を含むブログ (5件) を見る 廃墟の瓦礫のなかを無心に歩きつづけ、目にとまった人工物の破片をひょいと取り上…

Happy Birthday Jonas!

Jonas Mekas' official website 12月24日、クリスマス・イヴにジョナス・メカスは88歳の誕生日を迎えた。22日にはアンソロジー・フィルム・アーカイブズで、前祝いをかねて天才的な打楽器奏者の友人ダリウス・ナウージョによる独奏会が催された。23日の日記…

芸術家証明書 artist proof

Lifetime Achievement Award(Guggenheim, 2010 Art Awards) 12月8日、ニューヨークではグッゲンハイム美術館が主催する、ハリウッドのアカデミー賞を皮肉ったような第2回ロブ・プルーイットの2010年アート賞(Rob Pruitt’s 2010 Art Awards)の授賞式が開…

bivouac

ひさしぶりに、自分と二人きりになれた 空(「波の記録」2010-12-05) 野宿入門作者: かとうちあき出版社/メーカー: 草思社発売日: 2010/09/23メディア: 新書購入: 9人 クリック: 38回この商品を含むブログ (15件) を見る 自分という「相棒」をハラハラドキ…

かむろふるさと名産会

沖家室島の松本昭司さんから「かむろふるさと名産会」のふるさとギフトセットの案内状が届いた。ちょうど一年前の今頃、宮本常一を偲ぶ旅で民宿「鯛の里」と「沖家室水産」を営む松本さんにすっかりお世話になったことを思い出す。瀬戸内の潮に揉まれた海の…

日常

地を這う祈り作者: 石井光太出版社/メーカー: 徳間書店発売日: 2010/10/20メディア: 単行本購入: 7人 クリック: 80回この商品を含むブログ (15件) を見る 人は生を享ける場所を選ぶことはできない。気がついたら食うために家族を養うために同じようなことを…