雪の音


夕方から降り始めた雪が止むのを待って、午後10時過ぎに外に出た。20センチほど積もっていた。冷え込んでいる。綿菓子のように軽く、さらさらとした雪だ。家の前の雪かきを済ませてから、コンビニまで歩いた。踏みしめる度に、雪は鳴き砂のように、キュッ、キュッ、と大きな音を立てる。外灯の光を反射して暗闇に浮び上がるツララを撮った。大きな話し声が聞こえた。前方から見知らぬ若いカップルが並んで歩いて来る。向かって左側が男の子で、右側が女の子。女の子はプラスチックの買い物袋を左手にぶらさげている。コンビニで買い物をした帰りのようだ。男の子は携帯を右耳に当て、顔を女の子とは反対側に向けている。私は右側を歩いていた。すれ違い様に女の子がほほ笑んで「今晩は」と挨拶をした。黙って通り過ぎようとした私は驚いて挨拶を返した。彼女は私が暗がりの中で写真を撮っているのを見ていたのだろう。コンビニにも見知らぬ若いカップルがいた。男の子は週刊誌に釘付けだった。女の子は買い物籠をぶら下げて棚の間を歩いていた。私はいつもの安い赤ワインを買った。帰り道、深閑とした“しばれる”夜道に、キュッ、キュッという雪の音が一際大きく響き続けた。