私を威嚇した鴉


今朝の散歩で、道から外れて空地の奥まったところでウツボグサやキノコを撮影しているとき、一羽の鴉が嗄れた声を大きく張り上げていた。おそらく彼らの警戒線を越えて中に入ってしまったのだろう。道に戻って歩き始めた途端、その鴉は私の背後から頭の上を掠め飛び、前方の街路樹に止まって、鳴き続けていた。気にせずそのまま歩いていたら、その鴉は再びまったく同じように背後から頭の上を掠め飛び、今度はあるお宅の煙突の上に止まった。しょうがねえなあ、俺だよ、俺、分かんねえの? と声をかけて、そうだ、記念写真撮ってやろう、と言って、カメラを向けた。その鴉は一瞬ひるんだように見えたが、逃げずに鳴き続けていた。その姿を数枚撮りながら、いいか、おれはお前の敵じゃない。写真を撮って歩いているだけだ。心配することはない、と興奮気味の彼を宥めるように語りかけた。幸い、近くには誰もいなかった。その後は威嚇してこなかった。そういえば、先日苅谷さんがしつこい鴉がいて、何度も襲われたと言ってたな。しかも苅谷さんが知る近所の人たちも襲われたらしく、みな怖がってその道を避けているとも言っていた。同じ鴉に違いない。その鴉は若く見えた。私はその道の多くのポイントで定点観測のようなことをしているので、どんなに威嚇されようとも、歩き続けるつもりだ。ふと、鴉の身になってみたら、何が見えるだろう? と思った。