命の位相、生死の事象


藤原新也の書「死ぬな生きろ」の「死」の字。「Toriino」(トリーノ)第15号(2010年6月発行号)より。


先日訪れた美唄市宮島沼のネイチャーセンターで入手した。「彩、憶、流、響」の四楽章のうち「流」の章は藤原新也が担当している。今号は「揮毫」と題したエッセイの中で瀬戸内寂聴さんの「鳴門サンガ」で一気に書き上げた書が紹介されている。


幾世の春の残されし
梨の花散るふるさとの道


藤原の歌の一行に寂聴さんがその場で下の歌を付けたという。


そして最新刊(asin:4884182928)のタイトルにもなった「歌」。


死ぬな
生きろ


この歌は死のうとする人に宛てたものではなく、真意は「生きながら死ぬな」にあるという。すなわち「生きているのに本当に生きていない、死んだも同然の人」がターゲットである、と。



「Toriino」(トリーノ)第14号(2010年3月発行号 )より


藤原は前号では活字では立ち上がってこない言葉の意味、とりわけ例えば「命」の意味を、書によって立ち上げる試みについて語っていた。


「命」の位相は、個体の「生と死」の事象下にある。「命」に触れない「生」も「死」も、どんな語りも、つまんなくなってきたね。


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