「海で死ねたら本望だ」が口癖だったという海女の中村とみさんが、去る6月1日に、その望み通り海で亡くなっていた。今朝の朝日新聞の小さな記事「五線譜」で知った。享年78歳。中村とみさんは、三重県志摩の越賀(こしか)で「一番の海女」と評判だった。夫の源司さん(77歳)と二人だけで漁に出る「舟人(ふなど)」の最後の一人だった。記事によれば、「その日も、普段通り20キロの重りを抱えて10メートルの海に潜った。船上の源司さんに命綱を引き上げるよう合図が来た。だが、海面に浮んだ時に意識はなかった。急性心不全だった。海女仲間はみんな駆けつけた。まるでうたた寝をしているような、静かな表情だった。ただ、口はしっかり結ばれ、海水を一滴も飲んでいなかった。『引き上げるのが遅くて、おぼれさせてしまった』と、源司さんが悔やむことがないよう、最期も気遣ったのだろうか。海女たちは『とみさんらしい』と言い、その死を惜しんでいる」。不謹慎かもしれないが、迷わず成仏したような、底抜けに明るい感じがするのはなぜだろう。海に育まれ鍛えられた命が海に還っていった。
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亡くなる二カ月ほど前に雑誌『サライ』のスタッフらと水中写真家の尾崎たまきさんが中村とみさんを取材し、7月号にロングインタビューが掲載された。
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