ティータイム:COVER PHOTOS: Sadao Toyoshima, 1965



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二枚の魅力的なティータイム(お茶の時間)のモノクローム写真。CDカバーに使われたコントラストの強烈な二人の皺苦茶の老婆の写真と、CDに付された一枚両面刷りの解説の裏に縁なしで印刷された猿のような獣のそれと見紛うばかりの苦労と老いの刻まれた右手の写真。前者では、二人の手前にある卓袱台の上には急須と湯呑みが見える。後者では、おそらく仕事を終えた畑ちかくの地面の上に置かれた湯呑みに入れたばかりのお茶がちょっと泡立っている。それを今まさに持ち上げようとするおそらく老婆の右手の親指と人差し指が独立した生き物のように生々しく迫ってくる。ともに、ティータイム(お茶の時間)の一こまを捉えた写真。孤独の合間、労働の合間に、色んな時間と感情が交錯する豊かな瞬間を捉えたいい写真だと思う。その二枚の写真からすでにそれ自体音楽のような語りやつぶやきの声、そしてまぎれもない歌が聞こえてくるような気がした。写真に関してはライナーノーツに「COVER PHOTOS: Sadao Toyoshima, 1965」とだけある。宮古島の旧上野村出身で那覇市在住の写真家豊島貞夫。まだ見ぬ彼の写真集『記憶の中の風景』(琉球新報社、2007年)には1960年から1975年までに撮られた写真が収められているそうだから、その中に、上の二枚も入っているのかもしれない。(追記)2008年に宮古島市総合博物館で豊島貞夫写真展「風の島・宮古−魂の原郷−」が開催されたことを知った。上の二枚の写真はその写真展で展示されたかもしれない。



先日取り上げたドキュメンタリー映画『スケッチ・オブ・ミャーク』(2011年)の先駆けとなる、この「Sketches of Myahk」(2009年)には、宮古の代表的な古謡と神歌が、あくまで「今の歌」として、様々なアレンジを施され現代風にパッケージされて、同一曲のリミックスを含めて、計12曲が収められている。ただただ聴き惚れ、耳を澄ましていた。過ぎ去ったものや遠い昔へのノスタルジーに終わることなく、今ここを生きる拠り所の無さに身震いしつつ歓喜するようなサウダージのなかへ大胆かつ繊細に編み込む作業が、自身音楽家である久保田麻琴氏を中心に行われた点に深い共感を覚える。しかも、久保田麻琴氏が「天使的」と形容する声の持ち主、収録当時93歳、94歳の宮国ヒデさんの短い語りの声が、それらの歌を柔らかいパンのように挟む、サンドイッチ構成になっているところにも非常に感心した。


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