若い頃ゴダールに傾倒していたという仁平勝(にひら・まさる)は俳句の手法を映像の手法になぞらえる。
「悲劇はクローズアップでとらえられた人生であり、喜劇はロングショットでとらえられた人生である」というチャップリンの言葉を、ゴダールは好んで引用した。俳句はさしずめ、「カットバックでとらえられた人生」というところか。すこし悲しく、すこし可笑しい。
「あとがき」より
「カットバック」とは映像編集において複数の光景を交互に転換する手法、つまり切り返しのことだ。切って返す。それが異なる視角の間に終わりのない往復運動(対話)を生む。仁平勝の俳句の切れ味の良さの秘密はそこにあるのだろう。
美しく/秋刀魚の骨の残りけり(12頁)
追憶は大人の遊び/小鳥来る(148頁)