クロ・ビュザオのピノ・ノワール


Clos Buzao, Pinot Noir, 2011(Dealv Mare, România)


ルーマニア産の赤ワインを初めて飲んだ。女房がデパ地下の安売りで買ってきた「クロ・ビュザオ」のピノ・ノワール。濃厚な果実味と渋味のバランスがよく、予想外に美味かったので、生産者と生産地について知りたいと思った。どんな人がどんな土地で作ったワインなんだろう?


クロ・ビュザオの公式サイト(ルーマニア語ではなく英語)を訪ねてみたら、二人の作り手、ステファヌ・モンタリオル(Stéphane Montariol)とピエール・ドゥグロート(Pierre Degroote)の経歴と二人の関係について簡単に書かれていた。そしてクロ・ビュザオがある土地の特徴も簡単に紹介されていた。


それによれば、


ステファヌは父ベルナール(Bernard Montariol)が急逝した後、クロ・ビュザオの権利を引き継いだ。葡萄の間で育ち、18歳にして最初のワインを醸造した経験を持つステファヌは、葡萄畑とワイン醸造所の持続可能な技術を追究する専門家であり、近代化の過程と技術革新を「工業化に陥ることなく」最適化することを目指しているという。ステファヌの指揮の下、葡萄畑は縮小され、有機農法が導入された。ステファヌは伝統と品質と長期にわたる展望を重視する。「子どもたちによりよいものを手渡す」ことこそが一番大切なことだと考えるからである。そんなステファヌが追究するワイン造りの技術革新を支えるのがベルギー出身のピエール・ドゥグロートである。


ピエール・ドゥグロートはフランスのモンペリエ大学でワイン醸造学(oenology)を学んだ後、フランス南部でベルギー向けのラングドック・ワイン(Languedoc wines)の製造と輸出に携わり、ワイン造りに関する知識と技術を培った。「フランス南部で最初のベルギー人のワイン醸造家(oenologue)」また「箱入りフランスワイン(bag-in-box French wines)を最初に開発した人物」として知られている。その後、ピエール・ドゥグロートはクロ・ビュザオで葡萄栽培とワイン醸造を手がけていた友人のベルナール・モンタリオル(ステファヌの父)と一緒に新しいワイン造りを始めた。ところが、ベルナールが急逝したため、息子のステファヌが後を継いだというわけだった。ピエール・ドゥグロートはポリフェノールの抽出量を増やす技術とアロマの寿命を伸ばす技術に関して、モンペリエ大学とベルギーのルーヴァン大学との共同研究を行ないながら、ワイン醸造の技術革新を追究し続けている。


そんな二人がワインを作っているクロ・ビュザオ(Clos Buzao)のワイナリーはルーマニアの首都ブカレストの北130キロ、カルパチア山脈(the Carpates mountains)の麓のブザオ(Buzao)にある。ここはルーマニアでもっとも有名な葡萄栽培地であるデアル・マーレ(Dealu Mare)の心臓部に位置する。創設は1910年、面積は約175ヘクタール。葡萄畑は南東に面した斜面に広がり、高品質の白葡萄と特筆に値する赤葡萄を産出する。夏の終わりと秋の初めに惜しみなく降り注ぐ太陽の光のおかげで、見事に成熟した葡萄を毎年収穫することができる。また冬の厳しい気候は葡萄を寄生虫や病原菌から守ってくれる。葡萄畑は鉄分に富む粘土石灰質(clay-limestone)の台地に広がっている。土壌中の鉄の酸化物が、各種の葡萄に特徴的な香りと熟成能力をより一層強める働きをする。ワイナリーの地所は「葡萄の丘」(Dealul Viei)と呼ばれる地域にある。この地域の大部分では、メルローをはじめ、各種の赤葡萄が栽培されている。この土地(terroir)のおかげで、ボディとタンニンの非常によくバランスのとれた力強い風味の赤ワインを作ることができる。


こうして、生産者の横顔と生産地の特徴を少しは知ることができると、肝心のワインの味わい方も少しは深まるような気がしないでもない。


ところで、私が飲んだピノ・ノワール(Pinot Noir)の技術仕様書(technical specification)には次のように書かれている。

Country of origin Romania
Appellation AOC Dealu Mare
Soils Marl-limestone
Vineyard size 175 hectares
Harvest Manual
Grape variety 100% Pinot
Alcohol content 12.6% vol.
Aging 80% in French oak for 5-6 months
Malolactic fermentation 100%
Bottle Burgundy Evolution (case of 12)
Tasting notes Brilliant, beautiful colour.A fine and elegant wine with supple and harmonious aromas.


ちょっと気になった「80%フレンチ・オーク樽による5、6ヶ月の熟成」の技術が、タンニンによるほどよい渋味を生んでいるのかもしれないと思った。


ちなみに、ワイン醸造家の間ではフレンチ・オーク樽がいいか、アメリカン・オーク樽がいいかを巡る「オーク戦争(The Oak Wars)」なる興味深い論争がある。フレンチ・オークはアメリカン・オークの十倍ものタンニン成分を出すらしいのだが、それがワインの風味に与える影響をどう評価するかに関する論争のようだ。いずれ気が向いたら、立ち入ってみたい。


参照