臆病風

いい歳をして何をそんなに迷ってるの?違うよ、歳をとったから迷ってるのさ。えっ?若い頃は迷わなかった。迷う暇なんてなかったって言った方がいいかな。パッ、パッと一筋見えた道を突き進む連続って感じでさ。でも、歳をとるにつれていつも何本も道が見えるようになって、どの道を行くべきかためらうようになったのさ。臆病になっただけじゃないの?そうかも知れない。でも、いまさら猪突猛進でもないだろう。そんなことないわよ。いくつになっても、挑戦する勇敢な人だっているじゃない。そうだなあ。でも、俺にはもう無理だよ。情けないわね。付き合いきれないわ。そうやって死ぬまで臆病風に吹かれていればいいのよ。という女の言葉で夢から醒めた。しかし、醒めてからも終日臆病風が止むことはなかった。