Half Moon Bay, March 5th, 2005
少し肌寒い日曜日の午後、息子娘同然のアパートの隣人ビルとメラニーに誘われて何度目かのハーフムーンベイに行った。ビルがサーフィンの練習をしている間、メラニーと私は、海岸に面したお気に入りのカフェのオープンテラスで思い思いに過ごしていた。彼女は試験勉強といって分厚い解剖学の教科書に齧りついていた。ときどきうんざりしたような溜め息をついていた。私は店内の本棚から夏目漱石か三島由紀夫の英訳本を借り出して読んだり、ぼーっと海を眺めたり、海岸を散策しながら写真を撮ったりしていた。店の前の細い道を渡ると、断崖の下がすぐに砂浜の海岸だった。なぜか、断崖の上に店の白いプラスチック製の椅子が二脚並べて置かれていた。いい眺めだなあ。しばらくして、ふと気がつくと、一人のオッサン(初老の男)がその片方の椅子に腰掛けて読書しているではないか。なんてかっこいいんだ。絵になってるなあ、と思ったことだった。メラニーとは将来のことなど、ぽつり、ぽつりと会話した。彼女は卒業前の海外研修先を日本にしようかペルーにしようか迷っていた。以前書いたように、結局彼女はペルーを選んだ。