2020-06-28 ターミナル 創作 そこは鉄道の終点だった。やけに懐かしい場所だった。折り返しの列車の窓には見覚えのあるクラスメートたちの顔があった。男は列車の入り口を探してプラットフォームを駆けた。どこにも入り口はなかった。ベンチに腰掛けて読書していた黒縁眼鏡の若い女が顔を上げて「あっち」とあらぬ方を指差した。男には何も見えなかった。