エゾビタキ?


札幌、晴れ。僅かに新雪が積もっていた。1cmくらい。眩しい。藻岩山が白煙を上げているように見える。

急勾配の屋根に積もった新雪

アパート群の内庭には大量の雪が寄せ集められていた。

散歩の往路は左手の原生林と右手の住宅街とにはさまれた道を行く。今朝もツグミやカラの仲間のさえずりが聞こえ、数種が頻繁に頭上を行き来していたが、木にとまるもじっとはしていてくれず、なかなか写真は撮れなかった。一羽だけ、ツグミ系のを撮ったが、特徴が不明瞭で同定できない。

散歩往路の裏道の路面はまだ根雪が残っているが、帰路の表通りは昨晩降った雪も解けて、春の景観。

タンポポ公園のバード・カフェ、果実もすっかりなくなったエゾノコリンゴには客は見当たらない。ふと思い立って、躊躇する風太郎を説得し、いつもは通らない脇道に入ると、ある家の庭の樹の細い枝にヒタキの仲間らしい小鳥がとまっていた。特徴がはっきりつかめないが、エゾビタキSpot-breasted Flycatcherが非常に近い。とにかく、私が見かけるほとんどの野鳥たちは、あのシメも含めて、スズメの仲前か、と改めて思う。


その脇道に入ったお陰で、嬉しいことに、なかなか珍しい「電線ツララ」と「浮いた電柱」を発見する。

空き地に積み上げられた雪の山の下方に小さな空洞があって、「ミニ鍾乳洞」に見えた。

ヴィレンドルフのヴィーナス Peter Kubelka:365Films by Jonas Mekas

ジョナス・メカスによる365日映画、68日目。


Day 68: Jonas Mekas


Friday March. 9th, 2007
8 min. 05 sec.

Peter Kubelka
takes us to Willendorf,
Austria, where the
prehistorical
Venus sculpture
was
discovered

ペーター・クーベルカ
われわれをオーストリアのヴィレンドルフに
連れて行く。
そこは先史時代のヴィーナスの彫刻
発見された場所である

英語版Wikipediaの項目"Venus of Willendorf"をそっくり和訳した日本語版ウィキペディアの項目「ヴィレンドルフのヴィーナス」によれば、

ヴィレンドルフのヴィーナス (英語:Venus of Willendorf 独逸語:Venus von Willendorf ヴェヌス・フォン・ヴィレンドルフ) は、ヴィレンドルフの女としても知られるが、女性の姿をかたどった、高さ 11.1cm (4-3/8インチ) のスティアトパイグス型小像である。1908年に、オーストリアのヴィレンドルフ近くの旧石器時代の遺跡で、考古学者ヨーゼフ・ソンバティ? [Josef Szombathy] が発見した。像は、その地方では産出しないウーライト(魚卵状石灰岩)を彫刻して造られており、また代赭石で染められていた。
1990年時点における、遺跡の層序に関する再分析においては、22,000年から24,000年前に彫刻されたと推定された。小像の起源や、制作方法、文化的意味などについては、ほとんど知られていない。

しかし、怖るべき感受性の持ち主(一昨日も登場した)クーベルカは、考古学者たちが気づかないヴィレンドルフのなだらかな小高い山の景観に注目するように、メカス一行を促す。発見されたヴィーナスだけが問題ではなく、この山全体がまさに「女性」なんだ。神聖な場所なんだ。全体が、すべてが神秘的、恍惚とさせる雰囲気に満ちているのが分かるだろう。

クーベルカは自ら車を運転してメカス一行をヴィレンドルフまで案内する道すがら、ヴィレンドルフのヴィーナスが発見された一帯の景観の「女性的特徴」を得々と解説する。ヴィレンドルフに到着して下車してからも、発見された場所や4万年前から1万5千年前までの人間の活動が見てとれる地層が観察できる場所で、地質学的、考古学的な説明も一通りはする。「この一帯は少なくても4万年前から文化の中心だったんだよ。」しかし、彼の関心の的は学問的関心を超えたビジョンにある。「この山の形が女性のコンセプトなのは明らかだよね。」メカスのカメラはその山をとらえつづける。クーベルカは掌に載るサイズのヴィーナス像の一つをカメラの前に置き、山の形と比べて見るように促す。「どうだい、同じだろう。専門家はこういうことに気づかないんだ。非常にはっきりしてるよね。」カメラに背を向けたまま、しばらくの間クーベルカは黙って山を眺めている。「ここは文明の前哨地点outpostなんだ。」

最後にメカスがしみじみと言う。「祝福しなくちゃね、ここを信じていたマリヤ・ギンブタスを。」「そう、そうだとも。まったくその通り。彼女は偉大な科学者だったよ。」

マリヤ・ギンブタス(Marija Gimbutas, 1921-1994)はメカスと同郷のリトアニア出身のアメリカの考古学者で、日本でも邦訳書『古ヨーロッパの神々』(言叢社 1998)で知られる。

古ヨーロッパの神々

古ヨーロッパの神々

Goddesses and Gods of Old Europe, 6500-3500 B.C.: Myths, and Cult Images

Goddesses and Gods of Old Europe, 6500-3500 B.C.: Myths, and Cult Images

ギンブタス女史の研究の広範な意義ついては、すでに松岡正剛さんがここに分かっていることとまだ分かっていないことを非常に手際よくまとめている。「路地論」にも通じるような、ギリシア神話地母神のルーツと考えられる「古ヨーロッパ」における母権的世界、「大女神」が君臨した文化の輪郭を多面的に浮き彫りにしたギンブタスの仕事は非常に興味深い。またケルト文化研究や縄文文化研究との関連、そして男根像牡牛信仰「イヤー・ゴッド」との関係、などの興味も尽きない。

***
今日のフィルムの文脈からは外れるが、ジョナス・メカスクーベルカと飯村隆彦について書いているレビューの日本語訳が飯村隆彦の公式サイトのここhttp://www.takaiimura.com/review/MekasJ.htmlで読める。

私の野鳥検索法その1

何度か書いたように、朝の散歩で出会った野鳥の名前を知る、「同定するidentify)」のに、高野伸二著『フィールドガイド日本の野鳥』(日本野鳥の会)を愛用している。出会った野鳥の写真と動作や鳴き声(地鳴きとさえずり)の記憶を手がかりに、まずはこのガイドブックで「検索する(search)」。

いきなりネットで検索することはほとんどできない、というか非常に検索しにくい。なぜなら、ネット上では本物の「画像検索」がまだまだできないからであり、名前を知りたいのに、結局は特に私のような素人にとっては「名前」を知らなければ調べが付かないという根本的な困難が半ば放置されたままだからである。

このガイドブックの最初の見開きにあるような、すべての野鳥をその姿形で一覧できるような工夫がされたオンライン野鳥図鑑は私の知るかぎり存在しない。もしこのガイドブックがうまく電子化されれば、申し分のないオンライン野鳥図鑑ができるだろうが、できなくてもいい。

そこで、実際に私がどのようにこのガイドブックを使って、出会った野鳥を検索し、たまには同定しているかを、簡単に説明してみた。例によって、YouTubeにアップしたオリジナルのビデオが勝手に拡大表示されて、画像が粗くなり細部は判別しにくいかもしれないが、だいたいのところは分かると思う。もし分からないことがあったら、質問を寄せてください。

(言い訳:ビデオ最後で「コジュウカラ」と言ってるのは誤りで、正しくは「ゴジュウカラ」です。)


蛇足ながら、名前を中心とした言葉から織りなされた分類的知識の世界はどこでも似たりよったりのようだが、盲滅法というか、しらみつぶし的に全体を何度も通覧することを楽しんじゃう経験を積むのが「検索道」の一番の近道のようだ。楽しめなければ、続かないし、身に付かない。

いただけない会話その1

朝食時の会話で、あなたには父親の影も薄いけど、母親の影はまったくないわね、と言われた。大抵の男たちは程度の差こそあれ、マザコンなのに、どうしてかしら?分かるわけがない。好きなように、精神分析してくれよ。たぶん、三、四歳のころ、一度家を出た母親に自分は捨てられたと思い込んで、それに追い打ちをかけるように、弟に母親を奪われたと思い込んだからじゃないかしら。人間としての心の基本が出来上がる一番大事な時期にあなたをこの世で受けとめ、受け入れてくれるはずの人からあなたは捨てられた、あなたはその人を失ったと思い込んだ。だから、今でもあなたは他人を本当には愛せないのよ。失われた母親のイメージを求めて彷徨っているのよ。どう?「だから」は飛躍じゃないか?それに朝からそんなキツい話するなよな。でも、当たらずとも遠からずだと思うよ。母親の記憶は抑圧されているような気がする。いくら思い出そうとしてもどこかでブレーキがかかる感じがするんだ。そうね。父親の話は、文句が大いけど、よくするのに、母親の話は全く聞いたことがないもの。