坂本龍一「エゴからはじまる新エコロジー」の読解

受講生の皆さん、こんばんは。

今回は、
1)前回のおさらい、
2)「09否定のはたらき」、「ド・モルガンの法則」の解説、
3)「エゴからはじまる新エコロジー」の読解
を行いました。

2)に関しては、まず実際の対話状況における否認や拒絶や非難に含まれる「否定」の働きを観察することから始めて、否定のもつ論理的機能=操作としての特徴を「真・偽」の反転にあることを確認しました。そして、一見したところ単純に見える否定には、中間的選択肢が存在する場合があること、さらに、連言文と選言文の否定および全称文と存在文の否定に関するシンプルな法則(ド・モルガンの法則)を学びました。普段あまり意識することのない否定の働きについて知ることができてよかったという反応が多く、また実際の対話状況における否定の使い方、特に否定の意味を相手に納得させることの難しさに言及していた人もいました。感心!なお、授業で使用した「09否定のはたらき」を一部加筆修正したものを「三上研究室」のほうにアップしておきましたから、一読しておいてください。

3)で素材として使用した資料は『世界』(2006.7)に掲載された坂本龍一氏へのインタビュー記事です。いわゆるPSE法に対するインターネット上の電子署名による反対運動の一定の成果から見えてくる日本の負の現実から出発して、よりよい生き方を模索するために自分のエゴを地球環境への配慮にまでつなげる想像力の働かせ方に至る平易な議論でしたが、長文のため別に用意したレジュメを使いながら、論旨(議論の筋道)を押さえてから、論理的接続がやや複雑な箇所と議論全体を支える最も深い論点に関して解説しました。そもそも知らない人もいたPSE法をめぐるこの3月の騒動の経緯とそこから明らかになったこの国(日本)のお粗末な現実、「新奴隷制度」とも言える高度消費社会の「時間泥棒」的実態、電気の種類や税金納入先に関する自由な選択肢という発想、全体主義的指向に陥らないためのエゴからはじまるエコロジーの提案、のそれぞれに対して真剣な意見を書いてくれた人が多かったです。皆さん、かなり「書くこと」自体にも慣れてきたようですね。