「変化」がキーワード

ご覧のように、いつの間にか、仕事の合間にMy Life Between Silicon Valley and Japan(梅田さんのブログ)を覗く習慣が身に付いて、恥も外聞も性懲りもなく、記事の内容に「噛み付いて」、なんとか消化しようとしています。そうする背景には、「情報倫理」という講義で確信に近い直観を信じて『ウェブ進化論』を教科書に使うことを英断(?!)したこと、一昨年一年間だけシリコンバレーのど真ん中で生活していた「縁」などがあるのですが、梅田さんの書く記事がとにかく新鮮で刺激的で面白いというのがこうする一番の動機です。そしてその内容を学生さんたちに橋渡し(余計なお世話かもしれませんが)できればいいとも思っています。

梅田さんの7/6の記事によれば、
http://d.hatena.ne.jp/umedamochio/20060706
今年の「Wired 40」、すなわち世界のトップ40社の一位にグーグルが躍り出ました。昨年一位のアップルと入れ替わりました。ちなみにトヨタは七位。「Wired 40」の評価基準に関しては英文が引用されています。簡約すると、その基本は戦略的ヴィジョン、グローバルな影響力、キラー・テクノロジーですが、それだけでは不十分で、新しいアイデアを生み出しそれを実行に移そうとする熱意が最も重要な要因(X-factor)とされ、それらを兼ね備えた企業はほっといても新しい流行を生み出すものだということです。またグーグルの第一四半期の10-Qがアップされたと記されています。10-Qとは、米国証券取引委員会に対して提出される、四半期毎の報告書のことですが、PDFファイルをダウンロードして、目を通してみてください。グーグルの財務状況financial positionに影響を与える問題についてのさまざまな報告が100頁以上(!)にわたってなされています。

また、7/5の記事には、
http://d.hatena.ne.jp/umedamochio/20060705
トフラー15年ぶりの大作である『富の未来』(上・下)の書評というスタイルを借りた非常に興味深い「アメリカ論」が素描されています。ちなみに原題は「Revolutionary Wealth: How It Will be Created And How It Will Change Our Lives」ですから、「革命的富」です。ポイントはアメリカという国の一枚岩ではない、一筋縄ではいかない「分かり難さ」の解明です。それは田中宇さんが国際政治の観点からずっとしつこく分析している問題でもありますが、トフラーの洞察を引き受けながら梅田さんが指摘するのは、桁違いの「変化の国」=「大実験場」としてのアメリカ、特にシリコンバレーの現実を再認識する必要性です。しかし、それは単なるアメリカ、そして特にシリコンバレー賛美では全くなくて、トフラーの結論でもある「アメリカですら変化が足りない」のだというもっと先鋭な考え方につながります。
ここからは私の推理ですが、最早、国家や組織やコミュニティや個人に関して「変化」を云々して事足れりとする時代は終わりつつあり、今後はむしろ「変化」の方を物差しにして、国家や組織やコミュニティや個人の格と器を評価する視点を持つことが大切になるのではないでしょうか。