あなたに本を愛しているとは言わせない/何がバズか?

Googleのスキャンプロジェクトに関するbookscannerさんの報告がますます面白くなってきた。
Googleの1500万冊のうち、450万冊はダブり」http://d.hatena.ne.jp/bookscanner/20060906/p1

それと連動して、現役のライブラリアン黒澤さんの真摯なご意見等も非常に参考になる。
「黒澤公人のドキュメンテーションシステムの100年(1960年-2060年)」http://ameblo.jp/kimito001/

また、Google国会図書館を向こうに回して、パーソナルなスキャンプロジェクトを粛々と進めているKotoriKoTorikoさんのコピーライトや電子化方法に関する予言的指摘は鋭い。
google Book Searchについて」http://d.hatena.ne.jp/KotoriKoToriko/20060906/p3
国会図書館立川文庫を公開していた」http://d.hatena.ne.jp/KotoriKoToriko/20060906/p2

やっぱり具体的に本がどのように電子化されているか、そして現在のコピー機がいかに本を傷めているか、という未知への好奇心と本への愛情がスタートラインであるとつくづく感じます。

ところで、昨日、不勉強無知故の最低の誤解と偏見に満ち満ちたコラムに唖然としました。
2006年9月5日朝日新聞(夕刊)5面「思想の言葉で読む21世紀論」
「情報社会」の一傾向に警鐘を鳴らさんとこれを書いている人の心は2006年ではなく、1994年以前を彷徨っていると感じました。今「情報社会」について「思想」の観点から何か意味のある提言をなしうるとしたら、最低限の知的責務として梅田望夫著『ウェブ進化論』をちゃんと読む必要があります。そして、GoogleAmazonのやっていることを、そのテクノロジーやビジネスが秘めている「思想」を明確に認識した上で、議論をしなければなりません。そもそも「全体知」がこのコラムのテーマかつキーワードになっている点に、私は「信じられない!」を思わず連発しました。著者は冒頭でWikipediaから引用しているにも関わらず、です。その可能性や信頼性をめぐる議論を含めて、今問題にすべきなのはオープンソース・プロジェクトに見られるような「集合知」の方です。
蛇足ながら、私の理解では、『ウェブ進化論』は、21世紀型のテクノロジーとビジネスのど真ん中で、そもそも人はどうして、なんのために動くのか?という根本的で普遍的な哲学・思想的な問いを発するところから始まっているのです。具体的なネットやウェブの動向に関する真摯な調査と分析を怠って、「バズワード」、「プラスチックワード」の流行から時代を読み解こうする行為自体が、バズ行為、プラスチック行為にしかならないと私は思います。