講義の準備と後始末に追われている間に、bookscannerさんから星飛雄馬の魔球のようなレスポンスが返ってきていた。
「美崎薫さんと言えば、BTRONなんだそうだが...」http://d.hatena.ne.jp/bookscanner/20060926/p1
「美崎薫さんは「2009年に来る3年後の未来は日々体験ずみ」なんだって」http://d.hatena.ne.jp/bookscanner/20060927/p1
美崎薫さん?BTRON?記憶する住宅?どれも知らなかった私はbookscannerさんが設けてくれたリンクをたどり、なんとなく分かりかけたとき、梅田さんが『ウェブ進化論』で語っていたグーグルという「化け物」会社の本質について書いたくだりを想起した。
グーグルって検索エンジンを無償提供している会社でしょ……。一般的な認識はそんなものかもしれないが、たとえば検索エンジンひとつ取ってみても、その本質は「すべての言語におけるすべての言葉の組み合わせに対して、それらに適した情報を対応させる」ことであり、グーグルはこの検索エンジンを手始めに「知の世界の秩序」の再編成を目論んでいると考えればいい。日々刻々と更新される世界中のネット上の情報を自動的に取り込み、情報の意味や重要性、情報同士の関係などを解析し続けるために、グーグルの三〇万台ものコンピュータが、三六五日、二四時間体制で動き続けている。(p.014)
そして、bookscannerさんが引用している美崎薫さんの言葉:
あらゆる情報が瞬時に手にはいるようになったとき、記憶はゆら(ぎ、)・・・新しい感覚を抱いた人間が生まれるだろう
に、かすかなひっかかりを感じた私は、美崎薫さんのオリジナルの言葉を見て合点したことがあった。
自分に関するあらゆる情報が瞬時に手にはいるようになったとき、記憶はゆらぐだろうし、揺らがなかったらつまらない。ゆらいだときに、新しい感覚を抱いた人間が生まれるだろうと考えたのだ。揺らぐのだとしたら、その感覚を世界でだれよりも先に感じたい、と思った。
先ず、この仮定法が実現される見込みに疑いをもった。そして、bookscannerさんが意識的にか無意識的にか外した「自分に関する」の部分、ここに私は大きなポイントを感じた。もっと言えば、「自分という情報」、これはグーグルだろうが、神様だろうが、記録できないということ。そして「人生」についてもしかり。人生一般なんてありえないから、人生は「自分の人生」だから。グーグルの唯一の「盲点」は「自分」なんだと思う。「自分」を棚に上げて「化け物」会社になったんだ。そんなグーグルが提供する情報は決して「人類の知」にもならないし、「人生のパートナー」にもなりえないのではないでしょうか。ある意味で記録は記憶の滓だと思います。忘れることもまた記憶のすぐれた特性ではないでしょうか。なんでも記録してちゃたまんないですよね。セ・ラ・ヴィ。
というわけで、私としては「ガバナンス」路線が捨て切れないのですが。