父と娘(FATHER & DAUGHTER):365Films by Jonas Mekas

ジョナス・メカスによる365日映画、23日目。


Day 23: Jonas Mekas

Tuesday Jan. 23, 2007 3 min. 50 sec.

Yes, father and daughter.
Here is the perfect love,
as beautiful as it can be.
With Rumple and Shiva.

そう、父と娘。
猫のランプルとシヴァ。
ここにこの上なく美しい
完璧な愛がある。

凪いだ海のように寛いで、穏やかで、刺のない許し合う心。無闇に傷つけ合うことのない信頼関係。父と娘らしい二匹の猫が仲睦まじく毛繕いする様子をカメラは捉え続ける。確かめたことはないが、10年くらい前に見たドキュメンタリー番組で垣間見たメカスの自宅には、幼い娘さんの姿が一瞬映っていた。父子家庭なんだな、とその時思ったことを覚えている。

「そう、そう」と猫に、自分にも言い聞かせるようなメカスの声が最後に聞こえる。

私にも娘がいる。彼女たちには父親がいる。母親もいる。世の中には、母親のいない子、父親のいない子、そして、mmpoloさんが紹介している日本画家小川麗さんのように両親を亡くした子、そもそもいない子もいる。血がつながっているとか、生みの親とかが問題ではなく、そういう子たちにとってもなんらかの「父親」や「母親」は必要だ。それは必ずしも人ではないかもしれないが。

もちろん、心は凪いでばかりではない。曇りの日も、雨が降り続く時も、嵐のときだってある。刺をさし合うこともある。世の中は無闇に傷つけ合う関係に溢れている観さえある。でも、美しい、完璧な瞬間が存在することを一度でも体験していれば、その子はその記憶をどこかで継承し、次の世代に受け渡すことができる。毛繕いする動物たちを見ることも、そういう体験につながるはずだ。人間には社会的なしがらみを超えてその全存在を受け入れる、受け止める器の大きさがますますいよいよ問われている気がする。

「偉そうなこと言って!」という娘たちの声が聞こえなくもない。