映画の樹 Tampere Film Festival 2007:365Films by Jonas Mekas

ジョナス・メカスによる365日映画、3月、75日目。


Day 75: Jonas Mekas
Friday March. 16th, 2007
5 min. 32 sec.

I take Helsinki-
Tampere train.
Not much snow.
At the opening of
Tampere Film
Festival
.

ヘルシンキから
タンペレ行きの列車に
乗る。
雪はそんなに多くない。
タンペレ映画祭の
オープニングにて。

毎年三月にフィンランドの第二の都市タンペレ国際短編映画祭が開催される。37回目の今年は7日から11日まで開催された。このタンペレ映画祭は、世界屈指の短編映画のコンテストであるだけでなく、非常に幅広く多彩な映画が上映されることで知られる。短編映画に関しては毎年テーマが設定され、今年のテーマの一つ「巨大都市(Megalopolis)」部門のオープニング作品の一本としてメカスの"Birth of a Nation" (1997)が上映された。メカスは特別ゲストとして開会式で短いスピーチも行った。

カメラは、早朝首都ヘルシンキからタンペレへ向かう列車の窓から薄暗く寒々しいフィンランドの雪景色が展開するのをとらえる。独特のコブシの利いた民謡を歌う声が入る。そして素性不明の男性の声が重なる。

フィンランドといえば、オーロラムーミン、映画「かもめ食堂」サウナ外交など、いろいろと連想する。そして夏は太陽が沈まない白夜(midnight sun)が二ヶ月以上続き、冬は反対に二ヶ月近く太陽が昇らない暗い日が続くという土地での生活はどんな感じなのだろうと想像するのは楽しい。フィンランドの人々は長くて厳しい冬のストレスを夏には一気に爆発させ、夜通し遊び、冬は冬でクロスカントリースノーモービルで森林を駆け巡ったり、湖畔のサウナで汗を流したり、人生をアクティブに謳歌すると言われる。*1「よく言われることだけど、フィンランド人は夏は飲んで働かない。冬の間は働かないで飲む。」「ハッハッハッ」とメカス。「今は冬、とてもアクティブだ。」と第三の男の声。

映画祭の開会式。会場正面に一輪の薔薇を持った四人の子どもたちが並んでいる。暖かい拍手に包まれる。司会者の男性が特別ゲストとしてメカスを紹介する。トレードマークの帽子を被ったままのメカスが登場する。司会者から薔薇を一本手渡される。薔薇を手に、スピーチを始める。映画を一本の大きな樹に喩え、ハリウッド映画だけが映画ではなく、ハリウッドが見下すような映画もいっぱいあって、その唯一のひとつひとつが非常に大切なもので、大きな樹=映画の中に場所を持つ、つまりそれらすべてを合わせた全体が映画であり、人生であると、いつもながらの心の籠った映画への愛を力強く熱く語り、この映画祭の開幕に捧げる。「映画は100億円かけて製作される必要はない。一分の映画が、子どもたちによって作られていい、大人たちによって作られていいんだ。」という言葉が非常に印象的である。四人の子どもたちはどんな映画を作ったのだろうか。

*1:フィンランドの四季」http://plaza.rakuten.co.jp/finland/3001参照。ついでに、「フィンラインドにまつわる10の嘘」http://plaza.rakuten.co.jp/mihokonkotisivu/3001も参照。フィンランド全般については「フィンランドのページ」http://www31.ocn.ne.jp/~kmatsum/finnhist/chrohist_j.html参照。