"Theatre" Mars Bar, Giuseppe Zevola:365Films by Jonas Mekas

ジョナス・メカスによる365日映画、4月、118日目。


Day 118: Jonas Mekas
Saturday April. 28th, 2007
10 min. 45 sec.

With a glass of tekila,
Giuseppe Zevola
and Sebastian at
Mars Bar indulge in
Dante and Giordano
Bruno

テキーラを飲んで、
ジュセッペ・ゼヴォラ
とセバスチャンは
マーズ・バー
ダンテ
ジョルダーノ・ブルーノ
を思うがままに朗誦する。

マーズ・バーは2月26日以来、四度目のロケーション。通りに面した窓近くの明るいカウンター席で、テキーラを飲むジュゼッペとセバスチャン。ジュゼッペはセバスチャンに、ダンテを朗唱するよう促す。セバスチャンはちょっと緊張気味に、きれいな発音のイタリア語で暗誦し始める。途中すこし途切れて記憶をまさぐっていたが、再開し、なんとか終える。

次にジュゼッペがジョルダーノ・ブルーを朗唱し始める。さすが本物のイタリア人という感じで、だんだんテンションが高まって、席を立ち、オペラ(Opera)の一場面のごとく、カウンター内の店の娘に向かって恋心を歌い上げるような状態に昇り詰める。今時のちょっとすれっからしの娘は目を見張り、ちょっと引き気味に「何、この変なオジさん」といった表情ではあるが、ハプニングのパフォーマンスにちゃんと付き合っている。マーズ・バーは一時イタリアのどこかの歌劇場(Opera House)と化した。ダンテ(Dante Alighieri, 1265-1321)もブルーノ(Giordano Bruno,1548-1600)も、乱暴に要約すれば、ともに自由な思想の故に現世では放浪を強いられ、魂の住処を彼岸や宇宙のあり方を明瞭に言語化することの内に求めた男たちだった。

ジュゼッペ・ゼヴォラ(Giuseppe Zevola, 1952-)に関しては3月22日「有機的な外部記憶装置としての本 Giuseppe Zevola」に詳しく書いたが、得体の知れないところが多々ある。メカスの息子のセバスチャンとの関係もほとんど不明である。そもそもセバスチャン自身の経歴も不明である。今日のフィルムの二人の様子からして、イタリア語やイタリアの文芸思想に関してジュゼッペはセバスチャンの先生みたいな存在なのかもしれない。

撮影しているメカスはもちろん大変面白がっている。また、ジュゼッペとセバスチャンにカメラを向けるパイプ(Pip Chodorov, 1965-)と素性不明の若者が一人写っている。