Joyful Spring @the Prospect Park, Brooklyn:365Films by Jonas Mekas

ジョナス・メカスによる365日映画、4月、119日目。


Day 119: Jonas Mekas
Sunday April. 29th, 2007
6 min. 38 sec.

the Spring comes
to the Prospect
Park, Brooklyn
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ブルックリンの
プロスペクト・パーク(「見晴らし公園」)
春がやってきた

ある晴れた休日の午後、メカスは近所の大きな公園(プロスペクト・パーク)にやって来た。家族連れやカップルで賑わう公園。黄色い水仙がたくさん咲いている。満開の桜の木がたくさんある。ソメイヨシノ、枝垂桜。桜の花びらにクローズアップする。カメラは来園者で混雑している様子を一瞬とらえる。「魚がいるわよ」と同行者の声。「オーケー」とメカス。緑色に濁った水面に三匹の鯉とミドリガメが見える。「カメだよ、カメ」という幼児の弾んだ声に「そうね」という優しい母親の声。水面すれすれを泳ぐミドリガメがクローズアップされる。

再び桜の花のクローズアップ。一重の桜。赤ん坊の鳴き声が聞こえる。アセビ(Pieris japonica)の花の房に顔を寄せ、香りを嗅ぐ同行者の女性の横顔。カメラの下から右手が伸びてアセビの花房に触れる。浅い池にたくさんの鯉、そして飛び石。ひとつの石の上にミドリガメが。別の石の上にスマートな黒い野鳥が。人工の滝。湖岸から少し湖面に突き出した場所に建つ朱塗りの鳥居が見える。湖の向こう岸を大勢の来園者が往来しているのが見える。その向こう、公園の敷地の境界には背の高い松の木があり、さらにその向こうには高層ビルが見える。

湖岸の松の木の下、日陰になった場所で身繕いする野鴨のクローズアップ。気持ち良さそうに湖面に浮かび水を飲む野鴨。湖面に姿を写す枝垂桜。スペイン語の家族の会話が聞こえる。一重の桜がクローズアップ。カメラの下から右手が伸びて桜の枝をつかむ。見知らぬ木のピンクがかった白い大きな花がクローズアップ。別の見知らぬ白い木の花にカメラの下から右手が伸びて触れる。

薄い紫の草の花。黄色い草の花。花壇の標識。オレンジ色の小さな草の花。見たことのある薄紫の花だと思ったら、チオノドクサChionodoxa luciliae)。群生する赤いチューリップ。クリーム色のチューリップ。突然カメラは激しく動き出す。内蔵マイクが風を切る音を拾う。激しく揺れ動くフレームの中にオレンジ色の花、白い花が一瞬写る。白い建物が写る。丸くきれいに密な枝葉を剪定された背の低い木に右手が伸びてそっと置かれる。「よし、よし」といった感じで、二、三度撫でる。

メカスはもっぱら春を告げる花々、動物たちの様子をとらえる。桜の木が多いのが非常に印象的な公園だ。マイクロフォンは次々と人々の開放的で弾んだ話し声を拾うが、特に甲高い子どもたちの声がよく聞こえる。メカスはアセビの花の房に顔を寄せる同行者の女性の顔を捉えた他は、見知らぬ来園者の顔は極力撮影していない。