情報文化論2007 第6回 古代情報のデータベース化:ギリシア神話と古代都市アレキサンドリア

前回は、そもそも人類はなぜ「」を発明したのかという大問題を念頭に置きながら、古代における「神々の黄昏」(ワーグナー)ないしは「神々の闘争」(ウェーバー的な意味ではない)の模様を、主にアッカド帝国の成立、その後のゾロアスター教ヒンドゥー教の起源に見ました。ユダヤ教の起源については今回まとめてお話しますが、やはりヤハウェ神バール神の対立と闘争が潜んでいるのです。古代では民族の歴史は神の歴史とぴったりと寄り添っているというか、織り合わさっています。

今回は、古代ギリシアとは何だったのか、そしてアレクサンドロス大王がやろうとしたことは何だったのかについて、情報文化的な観点から迫ります。人類史における最初の大掛かりな情報編集のお手並みをギリシア神話に見てから、「世界」全体を情報的に再現、表象しようとするアレクサンドロス大王の構想、都市アレキサンドリアとその情報的中核をなしたムセイオン図書館を中心に概観します。

レジュメの骨格を掲載しておきます。

情報文化論2007 第6回 古代情報のデータベース化:ギリシア神話と都市アレキサンドリア

1古代ギリシア
1-1ギリシア神話
1-1-1古代ギリシャの宗教観
1-1-2ホメロスの物語の成立
1-1-3オリンポスの神話の実態
1-2ギリシア神殿(異教の神々の導入)
1-2-1アルテミス、ヘラ、ヘカテ
1-2-2アルミテス神殿(小アジアのエフェソス)、ヘラの神殿(オリンピアの初期ドリス式、アルゴス)、ヘラの第二神殿(BC670、サモス島)
1-2-3アクロポリスの神殿
1-3古代宗教情報の最初の統合編集プロセス
1-3-1ギリシアの編集方法
1-3-2ギリシア神話の情報編集
1-3-3男性神のゼウス型の物語構造

2ヘレニズム
2-1アレクサンドリアの建設
2-1-1セラピス神(オシリス+アピス)
2-1-2ムセイオン(アレクサンドロス大王の「世界のマスタープラン」の中心)
2-1-3二大図書館システム(ブルヘイオン/セラピウム)
2-2図書館の歴史
2-2-1寺院併設型図書館:古代エジプトバビロニア、ニネヴェ
カルナック図書館(テーベ)…銘文「魂の治療」(ディオドロス)
2-2-2個人的図書館:ギリシア時代
リクルゴスの図書館…アイスキュロスソフォクレスエウリピデスの三大悲劇作家の戯曲を保存
アリストテレスの図書館…個人的蔵書
2-2-3寺院型図書館:ヘレニズム時代
2-3ヘレニズム
2-3-1ガンダーラ様式
2-3-2シンクレティズム神仏習合
2-3-3コイネー(共通言語)の形成

3ユーラシア全体の動向
3-1「枢軸の時代」:偉大な思索者の同時出現
3-2遊牧民と定住民の融合
3-3社会の低迷
3-4「世界」観の萌芽

4補足
4-1ユダヤ教(『モーセ五書』、『七十人訳聖書』)
4-2原始仏教(第1回仏典結集、第2次仏典結集、ブラーフミー文字の普及)
4-3文字の動向(中国、ギリシア
4-5対話と逍遥