Celebrating Nature @the castle of Cumiana, Italy:365Films by Jonas Mekas

ジョナス・メカスによる365日映画、5月、140日目。


Day 140: Jonas Mekas
Sunday May 20th, 2007
9 min. 56 sec.

Sebastian, Benn,
we are guests of
Samantha, at the
castle of Cumiana,
Italy. We play, sing
and celebrate
nature.

セバスチャンとベンをはじめ
われわれはサマンサの客として
イタリアのクミアーナの城
にいる。
遊んだり、歌ったり
自然を祝福したりする。

緑に囲まれた大きな庭に野鳥のさえずりが響き渡る。背の高い輪郭が細長い円錐形の樹が二本、さらに背の高い枝を上に広げた樹が一本。ともに葉が生い茂っている。風に揺らめく大輪のピンクの花、アザレア(Azalea)。教会の建物の中。扉が開け放たれた出入り口から外の光が溢れんばかりに入ってきて、床に光の道をつける。野鳥のさえずりはまだ聞こえる。再び風に揺らめくアザレア。マイクは風の音を少し拾っている。メカスはカメラの絞りを調節している。一旦画面が真っ暗になるまで絞り込んでから、真白になるまでゆっくりと開いて、また真っ暗になるまで絞り込んだ。逆光のなかの枝を下に広げたトウヒ系の大樹。とつぜん、メカスの声。

Ahhh...
Nature!
The trees
The birds
I miss you
I miss you

カメラは揺れ動きながら大樹の枝や幹にクローズアップする。芝生も見える。ベンが大木の幹に両腕を回している。大人三人が両腕を広げても回せないだだろう。幹の直径は2mちかくありそうだ。

How many hundreds
of generations
of the birds
lived in this tree

反対側からセバスチャンも両腕を回す。

Bring us
Two hundreds years
It's telephone
Is that tree

ベンとセバスチャンは諦めて大樹を見上げる。ベンは両手を合わせ高く掲げた。

豊かな緑の庭を見回すカメラ。チェンバロによるバロック調の曲の演奏が聞こえ始める。メカスの遠い声が重なって聞こえるが何を言っているか聴き取れない。

The King of Savoy...

カメラは教会の中に入る。石の床、漆喰の壁、木製の窓枠。窓の外に瓦屋根と山に囲まれた村の景観が見える。再び冒頭の円錐形の二本の樹の映像。カメラは他の樹々を舐めるようにゆっくりとパンして、手前の花壇に咲き乱れるマーガレットで止まる。急旋回して、再び教会の内部へ。

チェンバロを弾いているベン。セバスチャンとパイプが傍に立っている。チェンバロの上には白い蘭が生けられている。三人の背後、部屋の隅に男性の胸像がある。おそらくこの城を建てたサヴォイア家の何代目かだろう。ベンが弾く曲に合わせて、メカスが舞い始めた。映像は乱れ、揺れながら回転する。床石を蹴るようなステップを踏む音が室内に響く。チェンバロの演奏終了。

居住空間のような別室、風に揺れるカーテンとレース。窓の外、庭の花壇に青い花が見える。メカスはまた絞りを調節する。円錐形の樹のぺアがまた見える。大型の野鳥が空を掠める。

再びチェンバロの音が聞こえてくる。メカスは鼻歌でメロディーを追う。先ほどとは違う曲。弾いているのは若い娘。彼女がサマンサなのか。その傍に先生のように立っているベンも鍵盤に手を延ばして一緒に弾いている。チェンバロから少し離れた場所でセバスチャンが極小のハーモニカを吹いている。メカスの鼻歌は言葉にならない歌声になる。男性の胸像がクローズアップされる。

カメラは若い娘とベンの鍵盤を弾く手指をクローズアップし、さらに、鍵盤に触れんばかりにクローズアップする。カメラで、目で弾いているかのようだ。カメラが鍵盤に当っている音が聞こえる。驚いた。カメラはチェンバロを離れ、部屋を見回す。パイプがハーモニカを吹いている姿が映る。入口近くに立って、こちらをじっと見つめる見知らぬ女性がいる。クローズアップされる。彼女がサマンサなのか。演奏は続き、セバスチャンも参加して三人で弾いている。三人によるアドリブ演奏は熱を帯びてくる。最後にはパイプも参加して、四人で弾いている。メカスは「あー」と声で参加。ハーモニカの音も加わる。

暗がりで揺れる白い布、カーテン(?)が映る。部屋の中央で舞うベン。先ほどの女性がなぜか床に正座している。カメラが旋回し出す。メカスも舞っている。映像は光の乱れた帯になる。

***

クミアーナ(Cumiana)は、イタリア共和国ピエモンテ州トリノ県の人口八千人に満たない小さなコムーネWikipediaによれば、

コムーネ(Comune)とは、イタリア語で共同体を指す語であり、現代ではイタリア共和国の行政における自治体の最小単位(基礎的地方公共団体)。イタリアには日本のような市町村の区別は行政上はなく、人口100万人を超えるナポリのような都市も、バローロのような1,000人以下の村もコムーネであるので日本語に訳す場合にはナポリ市やバローロ村の様に日本の自治体の規模に合わせて翻訳されている。コムーネの代表(首長)は、シンダコ(sindaco)と呼ばれる。