ジョナス・メカスによる365日映画、6月、166日目。
Day 166: Jonas Mekas
Friday June 15th, 2007
9 min. 16 sec.
Our team gets
hungry, we eat
Japanese. A lesson
in Japanese coffee.
Then we drop in
at an art party--
アンソロジーのスタジオで、上半身裸でマックに向かって編集作業を続けるベン・ノースオーバー。そばにハリー・スタンダール(Harry Stendhal)がいて、作業に何やら口を挟んでいる。女性スタッフも一人いる。カメラのレンズがなぜかすこし曇っているように見える。
寿司バーにて。テーブル上になつかしいコーヒー・サイフォン(サイホン)がある。ハリー・スタンダールがサイホン式の仕組みを説明している。メカス一行はサイホンを見たことがないのだろうか。サイホン式は日本式ではないと思うが、寿司屋で使っているのがサイホン式だったので、みんな「日本式」だと思い込んだようだ。調べてみたら、英語ではVacuum Coffee Pot(or Maker)で、17世紀中葉ヨーロッパ起源らしい。日本でもドリップ式のコーヒーメーカーが主流になる以前はサイホン式がよく使われていた。私も学生時代に使った記憶がある。アルコール・ランプの青い焔とアルコールが燃える匂いを思い出す。下のポット内の沸騰した水が上昇したら、上のポット内のコーヒーの粉を木のヘラでかき混ぜる。数分たつと自然と下のポットに抽出されたコーヒーが落ちる。その時間はコーヒーの香りと相まって至福の時間だった。使うたびに布のフィルターがどんどんコーヒー色に染まっていった。
よほど珍しいとみえて、メカスは水が沸騰し、コーヒーが落ち、日本人の男性店員がカップに注ぐまでをずーっと撮り続ける。一口飲んで、"pretty good"とベン。"not bad"とメカス。
「あるパーティー」とはブルックリンの3rd Ward Galleryの6月8日のオープニングのレセプションだった。それはLove's Secret Domainという現代サイケデリック・アートの展覧会の開会祝賀も兼ねていた。Love's Secret Domainの展覧会解説によれば、サイケデリック・アートとは、テクノロジーにへつらう精神ではなく、テクノロジーを叩きのめすような精神による、支配的な現実と戦う内的なイメージの宣言であるという。勇ましい。