立てば芍薬,座れば牡丹、私が見たのは…、エゾハルゼミ

札幌、曇り。やや蒸し暑い。

藻岩山。

シャクヤク芍薬, Paeonia lactiflora, Chinese peony)だと思う三種を撮った。違うのかな?三種とも木ではなく草なので、牡丹ではない。

シャクヤク

シャクヤク

シャクヤク

ところで、シャクヤクの漢字名の「薬」が気になっていたので調べたら、やはり根は漢方薬に使われ、学名Paeoniaもギリシア神話の医神Paeonの名に由来することを初めて知った。

自宅玄関脇に置いてある撒水器にエゾハルゼミ(Terpnosia nigricosta)がとまっていた。そういえば、蝉の大合唱はしばらく聞いていない。エゾハルゼミの鳴き声は専門の図鑑等では「ミョーキン!ミョーキン!ケケケ…」などと記載されているらしい。そして多くの方はそのように聴き、「記譜」している。セミの図鑑でエゾハルゼミの鳴く習性に関する興味深い記述に出くわした。長いが引用しておきたい。

朝から夕方まで精力的に鳴く。飼育したところ、まだ薄暗い部屋の中で朝5時半頃から鳴きだした。 午後4時をすぎるとフェードアウトし始め、5時〜5時半頃にはほぼ鳴きやむようである。 合唱性があるが、ハルゼミのように1頭が鳴き始めるとその周辺のセミが一斉に唱和するのとはやや異なり、他の個体の鳴き声を聞くと自分も鳴きたくなるという感じ。唱和するわけでなく競って自分も 鳴く風である。鳴き声の前奏部分、高潮部分のどちらを聞かせても 鳴きだす。多数の個体がいる産地の場合、1頭が鳴きだすと結局連鎖反応的に皆鳴きだし、その状態が長く 続く。ハルゼミのように日照にはほとんど影響されないのは、字を読むことも出来ない薄暗い部屋の中で 鳴きだしたことでも分かる。非常に多数の個体が一斉に鳴いていると離れて聞くとほとんど「ジャーーーー」としか聞こえない。

鳴き声は図鑑などでは「ミョーキン,ミョーキン,ミョーキン,ミョーケケケケケケーーー」などと書かれる非常にユニークなもの。前奏の「ミョーキン」を何回繰り返すかによって1回の長さは大きく変わるが、大体15〜20秒程度か。1頭ごとにこれを断続的に繰り返す。「ミョーキン」と「ミョーキン」の間は0〜数秒のGP(全休止)を入れる。ちなみに休止の長さは必ずしも同じでなく、ずっと鳴いているつもりなのか、鳴くのを一旦中止して新たに鳴き始めたのか判断できないこともある。すぐ近くの他の個体に誘発されて鳴く場合は「ミョーキン」の繰り返し数が少なくなる傾向があるように思う。「ミョーキン」と字で書くと変であるが、実際は(鼻にかかった声で)「ギョーギン」という感じで後半の「ケケケケケケーーー」は近くで聞いたときのヒグラシの鳴き声に似ている。林の中でセミに囲まれて合唱を聞いていると特にその感が強い。

以前大分県九重の山中でこのセミの大合唱を木を見上げて聞いていた時、通り掛かりの登山客に「何が鳴いているのですか?カエルですか?」と聞かれ、「セミです」と答えたのに、怪訝な顔で「セミとカエルですか?」と聞き返されたことがある。前半部分「ミョーキン・・・」と後半部分「ケケケケ・・・」の声が別々に聞こえたためであろうか。

1回の鳴きが短いため、同じところで数回〜十数回歌い、他の木に移る(鳴き移り)が比較的鳴き移りは少ないように感じる。その間、枝をこまめに歩き回って鳴く位置を変える。尚、休憩後初めて鳴きだすときは「ミョーキン」を始める前に「ジーーーー」と長く(抑揚無し)延ばすことから開始。またメスがすぐ近くに飛来すると鳴き方を変え(誘い鳴き)、「オセオセー,オセオセー」と鳴きながら近づき、直ちに交尾に入る。交尾はV字。

敬服すべき観察力である。なるほど、と思った。「鳴き声の前奏部分、高潮部分」、「0〜数秒のGP(全休止)」、「セミとカエル」、「休憩後初めて鳴きだすときは『ミョーキン』を始める前に『ジーーーー』と長く(抑揚無し)延ばすことから開始」など、私が実際に聴いた大合唱のクオリティが言葉になっていて驚いた。たしかに、セミとカエルの合唱のようにも聴こえる。最後の「『オセオセー,オセオセー』と鳴きながら…」には笑ってしまった。