midnight singing Brooklyn Music of Love:365Films by Jonas Mekas

ジョナス・メカスによる365日映画、8月30日、242日目。


Day 242: Jonas Mekas
Thursday, August 30th, 2007
9 min. 42 sec.

one more sit-pod
with Benn,
all about love ---

ベンと
もうひとつ(8月最後の)ポッドを、
愛でもちきり…

混み合って賑やかな薄暗いバー、たぶんゼブロンZebulon)、の店内で、テーブル席の目の前のベン(Benn Northover, 1980-)に向かって「将来に、友よ!」と言ってビールで乾杯するメカス。ベンが「ありがとう」という声に、「現在に!」とメカスの隣でグラスを掲げて朗らかに笑う短髪の若い女性の声が被る。彼女の素性は不明。「何を話そうか……、あーーーん(3秒間、記憶をたぐりよせている)、そう、6歳のときのことだ。実家の屋根から落っこちたんだ。月にキスをしようとしてね。本当なんだ。」とベン。

この後、やや芝居がかった気がしないでもない、しかも聞き飽きた感のある、ノラ・ジョーンズ(Nora Jones, 1979-)への片思い、恋い焦がれる気持ちを告白するベンに対して、メカスはそこまで悩んでいるなら、俺が仲介役、メッセンジャーを引き受けてやろうと言い出す。二人は乾杯と握手を繰り返し、そのうちメカスは「愛の詩」を暗誦しはじめ、それは次第に即興の歌になる。するとベンはいつも持ち歩いているらしいハーモニカを取り出して、メカスの歌に合わせて、即興で吹き始める。いつの間にか、メカスの隣の女性はベレー帽を被っていて、別人に見えた。「愛はひとつのフラグメント、愛はひとつのアスペクト、多くのアスペクト……それがすべてさ、友よ、……」

ちなみに、映像は次第に揺れを増し、歌い始めてからは、ほとんど焦点が定まらない。座ったままダンスしているかのように体を揺らすメカスの動きに合わせてカメラも踊っている。

場面は替わり、店を出た二人は、高架道の下の通りを歩いている。相変わらず、メカスは歌いながら、ベンはハーモニカを吹きながら。車の走行音が絶えず聞こえる。「……真夜中にブルックリンの愛の歌を歌う、愛よりも美しいものって、何だ、……、俺たちはブルックリのど真ん中にいる、……、君がどこにいるかは知らない、……、でも君を愛していることは知っている、友よ、……」

メカスはまだ若いベンの心を代弁するように、そしておそらく自分のなかの若い心を代弁するように歌い続ける。