lost, lost, lost and drink to James Joyce:365Films by Jonas Mekas

ジョナス・メカスによる365日映画、9月12日、255日目。


Day 255: Jonas Mekas
Wednesday, September 12th, 2007
8:55 min.

three friends, lost
in the woods of
Willisau, drink to
James Joyce ---

ヴィリサウの森の中で
道に迷った三人の友、
ジェイムズ・ジョイス
に乾杯する…

「三人の友」とは、メカス本人、息子のセバスチャン、そしてベン・ノースオーバー。彼らは「まだ」スイスのルツェルン(Luzern, Lucern)州のヴィリサウ(Willisau)にいる。「道に迷った」といっても、もちろん深刻な状況ではない。一種の遊び。でも、そもそもいつでもどこでも「迷う」ことを望んでいるような連中だ。迷いの中にこそ人生がある、とメカスなら言いそうだ。「迷い」とは「失う」ということでもある。自分が今いる場所を見失う。目的(地)を見失う。さらには自分自身を見失う。失うことに堪えること、失うことを楽しむことが、人生なのかもしれない。そして逆に本当は何も失うものなどないと知ることが。

迷って歩く道すがら、セバスチャンが見つけたクワ(桑, Mulberry, Morus alba)の黒く熟した実を三人で頬張る。旨い、旨い。(追記クロイチゴ(黒苺, Rubus mesogaeus)の間違いだったようだ。)

森の中の道の分岐点で、架空の乾杯をして遊ぶ三人。掌を丸めてグラスに見立て、そこにワインを注ぐ真似をして、さてメカスは「ジェイムズ・ジョイスに」と音頭をとって三人で乾杯する。「我らが」ジェイムズ・ジョイスJames Joyce)は1941年1月13日にチューリヒで亡くなり、動物園に隣接するフリュンテン墓地(Fluntern Cemetery)に埋葬されているのだった。同じ墓地の隣には、エリアス・カネッティElias Canetti, 1905-1994)が眠る。この地図を見ての通り、メカスたちがいるヴィリサウはチューリッヒから南西へ100kmほどの距離だから、車で2時間足らずだ。ジェイムズ・ジョイスが眠る墓地は遠くない。

迷いながら歩いた末に、三人は町を見下ろす丘の上に出る。美しい緑の草原の緩やかな斜面が続き、美しい木造の小屋が下に見える。そこをセバスチャンとベンは子供のように、横になったまま転がり下りる。歓声を上げるベン。セバスチャンはいつでもどこでも控え目だ。

町のカフェで、改めて本物の白ワインで、ジェイムズ・ジョイスに乾杯する三人。CAVE DU RHODANのFENDANTのラベルが大写しになる。(「ファンダンと珍しいワインの産地」参照)。三人ともかなり満足気だ。そのワインはCAVE DU RHODANのウェブサイトでは値段はFr.5,50。スイス・フラン(CHF)の対円為替相場が今日の時点で約96円だから、528円!もちろん、AOC VALAIS。日本には輸入されていないようだが、もし輸入されたら、日本での売値は2000〜3000円くらいになるんだろうか。「何はともあれ、ジェイムズ・ジョイスに」とメカス。