ジョナス・メカスによる365日映画、10月13日、286日目。
(左アドルファスと右コスタス)
Day 286: Jonas Mekas
Saturday, October 13th, 2007
7:08 min.
a video postcard
from Pola Chapelle--
with Adolfas, my
brother, she visits
Kostas, my other
brother, in Lithuania --
ポーラ・チャペルからの
ビデオ・ポストカード。
彼女は私の弟のアドルファスと一緒に
私の兄のコスタスをリトアニアに
訪ねる。
緩やかな坂道を登る車の中。右手には草原の丘が広がり、左手には林が続く。「ここがセメニシュケイ、我々の家だ」とアドルファスの声。「左手の、ここが墓地ね」とポーラの声。
アドルファスは墓前に花を生ける。墓石には両親の名が次のように刻まれている。
POVILAS MEKAS
1870-1957ELZE MEKIENE
1887-1983ILSEKITES RAMYBEJE
TARP OSIANCIUP PUSU
古いれんが造りの家の前で立ち話するアドルファスとコスタス。会話はリトアニア語で、意味不明。昔話に花が咲いている様子。アドルファスは笑う。カメラを構えるポーラも笑う。カメラの内蔵マイクは強い風の音を拾う。コスタスはちょっと寒そうだ。おそらく「中へ入ろう」という意味の言葉をコスタスが口にした。一同家の中へ移動する。
真っ白なテーブルクロスの上に所狭しとパン、ハム、チーズ、野菜、ワインがそれぞれ数種類、そして取り皿、ナイフとフォークが並べられている。狭い質素な食堂の窓際に置かれた小さなテーブル。窓には花柄のカーテン。コスタスとアドルファスが窓際の奥の席についた。他に小さなテーブルを囲むのは、コスタスの息子夫妻とその娘夫妻とその息子二人、そしてカメラを構えるポーラ。全部で9人が肩が触れあうほどの狭い食堂で食事しながら会話する。会話の内容は意味不明。
彼らは明るい戸外に出た。だれかが頭上を指差して何か言う。眩しそうにその方向を見上げるアドルファス。リトアニア語は意味不明だが、そのうちポーラとアドルファスの英語の会話が断片的に聞こえてくる。「ストーク」と言っている。
カメラは木製の電柱のてっぺんにある巨大な鳥の巣を捉える。コウノトリ(鸛, Stork)の巣だという。現在、その中にひな鳥が四羽いるらしい。人里どころか人家の庭に立つ電柱にコウノトリが営巣するとは。
***
ポーラ・チャペルはジョナス・メカスの弟アドルファスの妻であるが、ジョナス・メカスは若い頃からポーラに特別な想いを寄せていることは、4月2日と4月21日からも推察できる。そんなポーラの目を通して自分の生まれ故郷、両親の墓、兄の家族と家、コウノトリの巣を見たメカスは何を思うのか。