「数億の耳」がポコポコと開いた:HANKAPUY, OKI featuring Umeko Ando

アメリカのスミソニアン国立自然史博物館(Smithsonian Institution National Museum of Natural History:NMNH)における1999年のアイヌに関する大企画展ウェブ版『AINU:Spirit of a Northern People』の冒頭で使われている見知らぬ女性が歌う曲をめぐって、9月16日「記録の消息:二風谷の写真」のコメント蘭でCUSCUSさん(id:CUSCUS)と「超日本的な心の琴線に触れますね」などとちょっとやりとりをした際に、思いがけず、天啓のようなコメントがshiripirikaさんから届いたのだった。

故・安東ウメ子さんが歌う「Ihunke(イフンケ)」(子守唄)です。伴奏の弦楽器は、樺太アイヌに伝わるトンコリで、OKIが弾いています。
この「Ihunke(イフンケ)」は、OKI featuring 安東ウメ子名義のCD『Hankapuy』(1999年発表, Chikar Studio)の7曲目に収録されています。ちなみに、安東ウメ子さんのCD『イフンケ』(2001年発表)収録の同曲のヴァージョンではありません。
9月16日「記録の消息:二風谷の写真」

私はすぐにそのCDを注文した。ウェブで何度も聴いたその歌の「何か日本を突き抜けている感じです。空がもっと広いような。」(CUSCUSさん)印象を抱いて私は中山さんと二風谷に詣でたのだった。故・安東ウメ子(1932-2004)が歌う「IHUNKE」が収録されたOKI featuring 安東ウメ子名義のCD『HANKAPUY』(1999年発表, Chikar Studio)が秋分の日の昨日午後に届いた。

Hankapuy(ハンカプィ)

Hankapuy(ハンカプィ)

もう何度聴いたことか。今日も朝から聴いている。今も聴きながら、これを書いている。

(楽器トンコリのデザインは素晴らしい。OKIのドローイングも魅力的だ。)

アイヌ語の歌詞と訳詞があればなあ。)
初めて知ったOKIという音楽家の深く大きなビジョンと才能に驚くと同時に、安東ウメ子さんの歌声に改めて震撼させられた。
OKIのライナー・ノートによれば、タイトル「HANKAPUY(ハンカプイ)」とは、生き物としてのトンコリという楽器の「臍」を意味する。「IHUNKE(イフンケ)」とは子守唄(lullaby)のこと。OKIはトンコリというとても魅力的な楽器と共に、近代文明によって人間が見失った本当に人間らしい生き方を記憶、継承、再現しつづける旅の途上にいる。それはちょっと意外かもしれないが、とてもポップな生き方に寄り添い、鼓舞するポップな音楽だと感じた。体のなかの「数億の目」(吉増剛造)ならぬ、「数億の耳」をポコポコと開かせてくれるような音楽。不図思う。ちゃんと「子守唄」を創作できる大人、歌える大人、演奏できる大人は素敵だ。

shiripirikaさん、重ねて感謝します。

参考サイト&ブログ: