専門演習1(2007)が始まった

今日から学部2年生相手の専門演習1が始まった。例年超小数精鋭の三上ゼミであるが、今年度は当初は一人だったが、その後是非入りたいという学生が現れて二人になった。最初の一人、聖徳太子の名前を継承する高崎聖徳(マサヨシ)君は、情報処理系、商業系の資格を沢山取得し、成績も優秀、課外では今時かなりマイナーなしかし奥の深いアマチュア無線部で遊び、将来はサービス業に就くことを目標に、今から接客術を学ぶために某量販店でアルバイトもしているというなかなか充実した大学生活を送っている学生である。昨年私の論理学入門や言語哲学入門を受講し、「かねてより哲学という分野に興味があり、かつ、三上先生の思想・人間性に共感・好感を持てたから」という危険な理由で応募してきた。その危険さを重々認識してもらった上で、形式的なことはさておき、本質的には、彼が本来持ち、これまで彼自身で鍛えてきた賢い生きる力をさらに多面的にレベルアップさせることが私の課題である。

急遽飛び入りしたもう一人の橋本政人君は、札幌からみて小樽のちょっと向こう、積丹半島の東に位置する古平町出身の好青年である。三男坊でありながら、幼少の頃より家業の水産加工会社を継ぐ、社長になることを目標に生きてきた男である。札幌大学経営学部ではいわば「社長業」をこなすために必要な経営の知識やノウハウをどん欲に学んでいる。その彼が、「なるべく多くの異質な眼を持つことを養う」という私の演習アピールの趣旨に惹かれて、門を叩いてきたのだった。ものを売る眼だけでは限界があり、買う側の色んな眼が分かるようになりたいんです、と今日の自己紹介における私の容赦ないツッコミのひとつに応えて彼は言った。また驚いたことに母校の藤島先生が私の演習を薦めて下さったという。思いがけず本当に嬉しいことだった。

今日の初回は、私が演習の狙いと概要を説明した後、いきなりホワイトボードを使って二人に自己紹介をしてもらった。相手の反応を見ながら、「自己」をどこまで深く、あるいは広く過不足なく説明することができるかという観点からの荒治療的なプレゼンテーション能力のチェックと指導である。最初に登場した橋本君は、立ち位置、体の使い方、板書の仕方(実家のある古平町周辺の地図の描き方)から始まって、話しの組み立て方に至るまで事細かに私に突っ込みを入れられながらも、めげることなく、だんだんコツをつかみ始めて、後半には私がツッコム前に質問を予想して先回りして説明するようになった。正味50分くらいの三上ゼミ流「自己紹介」で、かなり疲れたようだったが、よく頑張った。


自分の番が終わり、ほっとして、余裕の表情で次の「聖徳太子」(高崎君のニックネームはこれで決まり)の自己紹介に耳を傾ける橋本君。


一方、時間が押していることを承知した上で、出身高校の統廃合問題から出身地および己の生い立ちや傾向や家族のこと、そして大学入学後の生活全般に関して休む暇なく要点をかいつまんだ自己紹介を行う高崎君。与えられた条件のなかで課題を積極的に見事にこなした点を大いに賞賛した。もちろん、今後深めなければならない認識や広めなければならない知見等はあるが、それらは文字通り今後の課題である。成長が楽しみだ。


終了後、聖徳太子は私のお茶好きを確認してから、珍しいいい香りの「柏茶」のティーバックを懐から取り出して、薦めてくれた。なかなか美味しい。柏茶を啜りながら、これを書いた。高崎、ありがとう。

今日から、彼らと私は「哲学史」と多くの先人たちの多様な「人生の記録(法)」を学びながら、自分の人生をよい意味でどんどん変えていく記録と記憶の実践経験を積んでいくことになる。