志村啓子さんとの出会い

野生の樹木園

野生の樹木園

雷鳥の森 (大人の本棚)

雷鳥の森 (大人の本棚)

「北イタリアの山里に暮らす巨木のような作家」マーリオ・リゴーニ・ステルンの代表作『野生の樹木園』(みすず書房、2007年)と『雷鳥の森』(みすず書房、2004年)について、訳者志村啓子さんの訳業の素晴らしさに打たれながら、断片的に綴ってきた。

その志村啓子さんに今日お会いすることができた。同僚のファビオ・ランベッリさんが企画・主催したイタリア人研究者の講演会に出席するついでに私の研究室を訪ねてくださった。実は、昨日北大でイタリア文学を教えていらっしゃる古賀弘人さんから一通のメールが届いた。上の私のエントリーを読んで、「妻」(?!)と一緒にお礼に伺いたいという驚くべき内容だった。なんと古賀さんの奥様が志村啓子さんだったのだ。見知らぬ人の見知らぬ夫からの突然の打診。私は飛び上がるほど驚くと同時に心底嬉しかった。それは是非、とすぐに承諾の返事を出した。

チェーホフの庭

チェーホフの庭

Winding Paths: Photographs by Bruce Chatwin

Winding Paths: Photographs by Bruce Chatwin

そういうわけで、古賀弘人・志村啓子夫妻との思いがけない出会いが実現した。ファビオの存在は大きいが、これもまたブログをやっていなければありえなかった出会いである。短い時間だったが、お二人の人となりの素晴らしさに触れることができた。志村啓子さんは研究室の本棚の小林清美著『チェーホフの庭』(群像社)を目敏く見つけ、目を輝かせて、『野生の樹木園』の「訳者あとがき」で触れられていたその本にまつわるエピソードを語ってくださったし、古賀さんはジョナス・メカスの『リトアニアへの旅の追憶』のポスターに目を留めてメカスへの共感を語り、またチャトウィンの写真集にも並々ならぬ興味を示してくださった。私は志村啓子さんにもしお会いすることがあったら、是非尋ねてみたいことがあった。それは『雷鳥の森』の訳者略歴に記された「自宅に『寺子屋』を開く」という経歴についてだった。私の質問を受けて、志村さんは「書いてよかったわ」と言ってくださったが、残念ながらその詳しい話をお聞きする時間は残っていなかった。お二人とは再会を約束して別れた。