喪失を深く胸に刻む

 敬愛してやまぬリゴーニ・ステルンが永遠の旅に立った昨2008年は、私にとって喪失を深く胸に刻む年でありました。
 いまは失ったものを嘆くのではなく、出会いの恵みに感謝しつつ、すぐれた先達の遺してくれたものを伝える仕事をこつこつと続けてゆきたい------今年はその新たな出発点と思いさだめています。

 2009年新春 志村啓子

一昨年の晩秋に、このブログでイタリアの文豪リゴーニ・ステルンを取り上げたことが縁となって、リゴーニ・ステルンをはじめとするイタリア文学の翻訳家で札幌の小樽に近い星置という素敵な名前の土地にお住まいの志村啓子さんと夫君のイタリア文学研究者である古賀弘人さんにお会いした。


リゴーニ・ステルンが昨年6月16日に逝ったことを志村さんの新年の便りで初めて知った。同封された「婦人之友」(2008年9月号)に掲載された志村さんの「追悼・リゴーニ・ステルン/森の奥で一本の巨樹が」のコピーと、「週刊読書人」(2008年9月5日号)に掲載された古賀さんの「イタリア文学の二十世紀は暮れて/マーリオ・リゴーニ・ステルンを送る」のコピーを読みながら、私は遅ればせながらリゴーニ・ステルンの偉大な足跡を偲んだ。

リゴーニ・ステルンと親交のあった志村さんの「喪失を深く胸に刻む」という言葉が胸に深く響く。己の存在理由をさえ奪いかねない深い傷こそが真に「新たな出発点」となり、南無さんの言う「新たな命」の発条となるのだと再認識した。


参考: