ブドウ畑のバラ、炭坑のカナリア、坂本龍一

大掛かりな科学調査に基づく、精密農法によるブドウ栽培で知られるカリフォルニアで、そのいわば「超ハイテク農法」の陰でブドウを守っているのは、実はブドウ畑の傍らに植えられたバラであることを初めて知った。

この記事で引用されているオーパスワン(Opus One)のワイナリーツアーガイドの言葉。

科学ばかりでもね、ないのですよ。それはブドウ畑の側に植えられたバラです。バラはとてもデリケートな植物で、寄生虫や病気が流行ると、真っ先にかかります。ワイナリーのバラは、私たちにブドウの健康状態を教えてくれるドクターでもあるんですよ。

なるほど。ただ、「ドクター」というよりは、真っ先に危険を察知して、命がけで知らせてくれる炭坑のカナリアCoal mine canaries)に似ていると思った。

翻って、地球規模で考えたときには、すでに多くの動植物(人類の一部すら)が、そのような意味での「バラ」か「カナリア」になってしまっている。

先日、偶然に音楽家坂本龍一が中心になって立ち上げた森林再生プロジェクトmore treesを知った。非常によく考えられたプロジェクトだと感じた。

more treesの代表・坂本龍一による、more trees立ち上げのきっかけとなる、地球温暖化防止と森林再生をめぐる彼らしい押しつけがましくないスマートなメッセージがYouTubeにアップされている。

私がブログを本格的にやり始めたひとつのきっかけは、坂本龍一のブログ「ひっかかり」だった。それは世界中、日本中の気になること、心に引っかかること、違和感を表明し続けた私の中では最も刺激的なブログの一つだったが、2006年11月に「「blogというかたちで不特定多数(多数じゃないかもしれないけど)の人と情報や意見をシェアすることに疑問を感じ」たからという理由で閉鎖した。そのときは非常に残念に思いつつも、その理由をとりあえず「リアルに共有すべきものが、blogという形での共有に侵されることへの疑問」と理解しメモしておいた(「『ひっかかり』の閉鎖にひっかかった」(2006-11-20))。今にして思えば、彼はおそらくブログによる発信では追いつかないほどの危機感をそれこそカナリアのように察知していたのだろう。一刻も早く実際に動く必要があると。more treesはそのような一連の彼の行動の一つである。「不都合な真理」「六ヶ所村」をいち早く取り上げたのも彼だった。坂本龍一は人類にとってのカナリアかバラみたいな存在なのかもしれないと思った。