日本語の横書き文書では点をめぐって秘かな攻防が繰り広げられている。「句点+読点」VS.「句点+コンマ」である。そこには旧文部省VS.旧自治省という背景があったらしい。知らなかった。
日本語の縦書き文書では文の終わりにもっぱら読点(、)が用いられるのに対し、横書き文書では読点とコンマの両方が用いられる。現状では読点の方が若干多いように思われる。しかし、旧文部省が「公用文作成の要領」においてコンマの方が横書きでは正しいとしたが、旧自治省が「左横書き文書の作成要領」において読点を使用することが正しいとしたため、実質上どちらも正しいとされる。
コンマ(ウィキペディア、2008年3月11日検索)
私は横書きでも必ず読点を用いるようにしているが、印刷所から戻ってきた原稿は上のようにすべて強制的にコンマに置き換えられている。以前から気になってはいたが、最近は書体やタイポグラフィーにかなり注意するようになってしまったせいもあり、大きくひっかかっている。私の主観では、たとえ横書きでも日本語にコンマは似合わないし、しかもコンマの後ろのスペースは文章のなかに穴が空いたようで間延びして見えるだけでなく、実際に文字を追う目はそこで一瞬止まる。ワープロやテキストエディタで入力する際にも、最初から「句点+コンマ」用に入力設定しておかなければ、いちいち半角に切り替えなければならないという不合理さもある。それなのに、少なくとも私の今までの体験では、日本語横書き文書では「句点+コンマ」は事実上の標準になっているようで、「句点+読点」という日本語本来のルールは形勢が不利であるような印象を強く持っている。
手当り次第に日本語横組の雑誌や本をめくってみたら、ウィキペディアの記述通りに「句点+読点」派と「句点+コンマ」派はほぼ半々だった。そうか。たまたま私が今まで関わった雑誌の出版社や印刷所が「句点+コンマ」派だったということのようだが、上の原稿に関してはコンマを読点に戻してもらえないか打診してみるつもりである。