最古の万葉仮名文

新聞の切り抜きを整理していて、「最古の万葉仮名文」という見出しの記事が目に留まった。2006年10月31日の朝日新聞朝刊である。本文を引用する。

 大阪市中央区難波宮跡で、7世紀中頃のものとみられる、日本最古の万葉仮名文が書かれた木簡が見つかったと、大阪市教委と市文化財協会が12日、発表した。万葉仮名文の成立は一般に7世紀末ごろとされていたが、今回の発見で20〜30年、さかのぼることになる。市教委などは「日本語表記や和歌の歴史にとって画期的な資料」としており、「万葉仮名文は7世紀末ごろに柿本人麻呂が完成させた」とする説にも再考を迫るものとなる。
 万葉仮名は主に漢字1字を1音にあてて日本語を表記した文字で、万葉集で使われていたことで知られる。今回、出土した木簡は、長さ18.5センチ、幅約2.65センチ、厚さ5〜6.5ミリ、丁寧に削られた片面に、墨で「皮留久佐乃皮斯米之刀斯」の計11字が書かれていた。12字目をわずかに残して、下部は欠けた状態だった。国語学の専門家は「はるくさ(春草)のはじめのとし」と読む可能性が高いと指摘。「春草の」は万葉集で枕詞として使われており、文は五・七音を重ねた韻文の可能性が高く、和歌とみられる。木簡は一緒に出土した土器や地層の状況から、大化の改新後に飛鳥京から遷都した前期難波宮の完成(652年)直後のものとみられる。
 これまで、万葉仮名文が書かれた古い木簡としては、古今和歌集の和歌の最初の五・七部分「奈尓波ツ尓作久矢己乃波奈(難波津に咲くやこの花)」が書かれた観音寺遺跡(徳島市)出土の木簡(689年以前)などが知られていた。

学説的関心はさておき、以前書いたように、

漢字1字を1音にあてる「上代特殊仮名遣い」はなかなか魅力的だ。

はるくさのはじめのとし
皮留久佐乃皮斯米之刀斯
春草の初めの年

なにわづにさくやこのはな
奈尓波ツ尓作久矢己乃波奈
難波津に咲くやこの花

こうして、現代仮名遣いと比べているうちに、万葉仮名にますます魅せられていく。万葉仮名のほうが合理的な印象さえ受ける。「乃」と「之」の音は当時どう違ったのだろう、と想像するだけで楽しい。