ハーツ・ルールの第一は不定冠詞の遣い分け方


英語の組版マニュアルのうち、英国の「オックスフォード・スタイル」のコンパクトな便覧『ハーツ・ルール』(HART'S RULES FOR COMPOSITORS AND READERS・OXFORD 37th edition, 1967)の古書が届いた。縦18センチ、横10センチ、総頁数141のポケット・サイズである。

面白いのは、不定冠詞aとanの遣い分け方のルールが銘記されていることである。しかも最初のルールとして。英語を母語とする人々も迷うことがあるんだなあ。


CHICAGO MANUAL OF STYLE, p.289

ちなみに、米国の『シカゴ・マニュアル』(CHICAGO MANUAL OF STYLE 15th edition, 2003, First edition published 1906)では不定冠詞の遣い分けルールは中盤のスペリングのルール群のなかにOとOhの遣い分け方と一緒にごく簡単に載っている。

それにしても『ハーツ・ルール』の初版は1893年である。明治26年である。日本ではようやく句読点の遣い分けの意識が生まれつつあった頃だ(→ 「明治二十年代、そして」)。日本語の組版と100年以上にわたって組版の基本がマニュアル化されて継承されている英語の組版とは単純に比較できないと改めて思う。