『組版原論』解体

組版原論―タイポグラフィと活字・写植・DTP

ページと力―手わざ、そしてデジタル・デザイン

ページと力―手わざ、そしてデジタル・デザイン

府川充男著『組版原論』を一方では先に読んだ鈴木一誌作「ページネーションのための基本マニュアル」と鈴木一誌著『ページと力』との関係で、もう一方では府川氏も鈴木氏も一目も二目も置く杉浦康平の『アジアの本・文字・デザイン』などを同時進行で読みながら、人間にとって奥深い比喩としても機能している「本」や「ページ」や「文字」の世界を楽しんで巡礼している。面白すぎる。

ところで、現在では入手不可能に近い『組版原論』(太田出版、1996年刊)は題名から推し量りにくい内容構成だった(『ページと力』もそうだったが)。全体は大きく二つに別れ、第1章は文字と組版の歴史を踏まえたいわば基礎知識篇。「基礎」といっても、色んな観点から深く抉った論考の集成で、読み応えがある。第2章が題名通りのいわば組版の実践応用知識編となっている。以下本書の内容構成全体を簡単に展望してみる。

総頁数 初出 備考
第1章 11–210 200 - -
タイポグラフィへの視線 11–62 51 1993年*1 総論
新字と神字 近代日本における文字の発明 63–80 18 1993年*2 各論1
”近代和文活字の曙”を概観する 81–88 8 1991年*3 各論2
明治初年の「非本木系活字」 89–98 10 1991年*4 各論3
小括・築地体と秀英体 99–110 12 1993年*5 各論4
『活字礼讃』に寄す 111–124 14 1991年*6 各論5
明治の新聞紙面と組版意匠の変遷 125–176 52 1995年*7 各論6*8
[図録=組版技法] 177-210 34 撮り下ろし タイポグラフィの実例集*9
第2章 211–397 187 - -
和文組版ルールと技法のベーシックス 211–310 100 1994年*10 詳細な「ページネーション・マニュアル」*11
ディジタル組版システムと漢字字体 311–340 30 1994年*12 ディジタル組版制作に最低限必要な知識
BIBLOS外字逍遥 341–350 10 1994年*13 BIBLOS外字(漢字数百字と記号)を扱う
一律一歯詰め組版を排す 351–358 8 1994年*14 日本語の可読性とツメ組
写植およびQuarkXpressにおける組版演算の基礎 359–397 39 1993年*15 QXの限界*16

*1:『文字––文化––デザイン』(阿佐ヶ谷美術専門学校タイポグラフィ・ゼミ、1993年10月)

*2:『別冊歴史読本』特別増刊「『古史古伝』論争」(新人物往来社、1993年7月)

*3:『季刊TKS』第26号(東京機械製作所、1991年10月)

*4:『アステ』第9号(リョービイマジックス、1991年11月)

*5:タイポグラフィックス・ティ』第150号(日本タイポグラフィ協会、1993年5月)

*6:『活字礼讃』(活字文化社、1991年)

*7:『武蔵野美術』第95号(特輯=モダニズム、武蔵野美術大学、1995年)

*8:これは「幕末--大正の新聞紙面と組版意匠の変遷」と改題され『印刷史/タイポグラフィの視軸』(実践社、2005年)に訂補・収載された。

*9:第2章の組版技法を駆使し活字書体を多用している

*10:Macintosh Project News』第2巻第2号及第3号(聚珍社マッキントッシュ・プロジェクト、1994年2月及3月)

*11:特に「見出し組版の技法」は独自の存在意義を有する

*12:Macintosh Project News』第2巻第2号及第3号(聚珍社マッキントッシュ・プロジェクト、1994年2月及3月)

*13:Macintosh Project News』第2巻第4号(聚珍社マッキントッシュ・プロジェクト、1994年6月)

*14:Macintosh Project News』第2巻第4号(聚珍社マッキントッシュ・プロジェクト、1994年6月)

*15:Macintosh Project News』第1巻第8号及第2巻第3号及第4号(聚珍社マッキントッシュ・プロジェクト、1993年9月及1994年4月及6月)

*16:「そもそも『ボックスにテキストを流し入れる』という基本的コンセプト自体に限界がある」(394頁)