タイポグラフィ

文字の可読性と美学

id:mmpoloさんから送っていただいた東京都庭園美術館の「20世紀ポスター[タイポグラフィ]−デザインのちから・文字のちから」(TYPOGRAPHIC POSTERS OF THE 20TH CENTURY)展のカタログとDNP(大日本印刷)のggg(ギンザ・グラフィック・ギャラリー)の「秀英…

新井白石『西洋紀聞』

西洋紀聞 (岩波文庫 黄 212-3) 先日、近所のCOOPに買物に行った折、無人の古本50円均一コーナー(鍵のかかったユニセフの募金箱が設置してある)を眺めていたら、一冊の古い岩波文庫が目にとまった。新井白石の『西洋紀聞』だった。1709年、鎖国下の江戸中期…

日本語のデザイン

ギョッ。こんな幟(のぼり)が必要なのかな。目立ちゃいいというもんではないと思うんだけど。それに、どうせ作るなら、ハッと息をのむような「美しい」書体とレイアウトを工夫してほしいなあ。「日本語のデザイン」の歴史と基本を踏まえてさ。伝わりゃいい…

府川充男さんがやってきた!

府川充男さん(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BA%9C%E5%B7%9D%E5%85%85%E7%94%B7)がやってきた! 「絶対文字感と真性活字中毒者」(2008年03月14日) 「府川充男」という名前が『聚珍録』というとんでもない本との衝撃的な出会いとともに私の脳裏に刻み…

タフテ四度

asin:0961392118 asin:0961392126 「データのレオナルド・ダ・ヴィンチ」と異名をとるエドワード・タフテ(Edward R. Tufte, born 1942)が90年代に出した上の二冊もワクワクするほど面白い。私たちの複雑な経験(データ)を平面上にどうやって表現(視覚化…

ハーツ・ルールの第一は不定冠詞の遣い分け方

英語の組版マニュアルのうち、英国の「オックスフォード・スタイル」のコンパクトな便覧『ハーツ・ルール』(HART'S RULES FOR COMPOSITORS AND READERS・OXFORD 37th edition, 1967)の古書が届いた。縦18センチ、横10センチ、総頁数141のポケット・サイズ…

小カギの消息

asin:4888882355 府川充男氏が大カギと小カギの遣い分けルールを記した例外的なマニュアルとして挙げていた日本エディタースクールの『標準 校正必携』の「第七版 電算植字対応版」(2006年)に目を通した。 文字の辺境、無音の約物の世界は賑やかだ(2008-0…

ガリレオとマティスの革命的ページ・レイアウト

以前、英米語編集者たちが聖書のごとく参照する『シカゴ・マニュアル』と「タフテ」ことEdward Tufte, The Visual Display of Quatitative Information(Graphics, 1983)について書いた。 タフテ、タフテという呪文(2008-04-02) その後、タフテの新作である…

文字の辺境、無音の約物の世界は賑やかだ

「藤岡弘、」、「モーニング娘。」…。知らなかった。芸名に句読点やピリオドが含まれる芸能人がこんなにいるとは。芸人ではないが、そういえば、知り合いのデザイナーは「takuo.. .」だった。シャレたことをしているなあと感じていたが、文字世界の辺境に遊…

府川充男の杉浦康平評

1994年に府川充男は杉浦康平の仕事をこう評した。 70年代以降の組版技法における例外的に優れた達成としては杉浦康平のいくつかの仕事がある(もとより杉浦による新しいエディトリアル・デザインのスタイルと発想の提唱は”グラフィズム”ないし情報編輯全般に…

寄り引きの補正、私のささやかな実験

府川充男氏はタイポグラフィの技術の「いろは」を二点に要約する。 「タイポグラフィ」ということのアルファにしてオメガというのは、何をどう組み合わせるか、つまり、第一に、どういう形の文字を、つまりどういう字体・書体・書風の文字を、第二に、どのよ…

テクストの領土、組版の領域

世の中にはテクスト右派とテクスト左派がいる、と考えた。いわゆる本好きはテクスト右派。テクストは読めりゃいい派。いわば真性意味中毒者。対して、私がなりかけている字体、書体、書風まで気にするのがテクスト左派。テクストは読めりゃいいってもんじゃ…

タフテ、タフテという呪文

以前、英語印刷物を作る際の詳細な組版ルールを記した米国版マニュアル『シカゴ・マニュアル』*1と英国版マニュアル『オックスフォード・ルール』*2を取り上げた。 『シカゴ・マニュアル』はとってもクールだ(2008-03-16) 『英文日本大事典』と『シカゴ・…

『組版/タイポグラフィの廻廊』の中身、平仮名の実験

本日、先の「タフテ」と一緒に府川充男他著『組版/タイポグラフィの廻廊』(白順社、2007年12月、asin:4834400980)が届いた。「はしがき」によれば、本書は当初『組版原論』の新版として企画が持ち上がったらしいが、諸般の事情から、「旧著から講演一本の…

広告パラダイム

以前、印刷史上われわれは書体的には「築地体パラダイム」のなかにいると書いた。 「築地体パラダイム」(2008-03-24) そのさらに背景に控えるパラダイムが広告であることを知った。 今朝の朝刊(朝日新聞)の国際面で目をひいた記事。「姿消す」という見出…

真性活字中毒症状報告つづき、そして

昨日は出かけた先で実はひどい症状に見舞われて焦っていた。報告するのを躊躇った。駅ビル内の大型書店での出来事だった。分野にも判型にも関係なく、書籍、雑誌の区別なく、どの棚の前に立っても、どの本を手に取ってページを捲っても、皆同じような「顔」…

文字に声を聴く

杉浦康平編著『アジアの本・文字・デザイン』(asin:4887521960)のなかで、インド・カリグラフィーの第一人者であり、詩人、デザイナー、タイプフェイス・デザイナーでもあるジョーシー(R. K. Joshi、1936年、インド、マハラシュートラ州サングリ生まれ)…

『組版原論』解体2:「和文組版ルールと技法のベーシックス」、ついでに「和文横組句読点選択問題」再考

日本語の組版に関して多くの編集者やデザイナーが参照してきたのが『組版原論』第2章である。なかでも「和文組版ルールと技法のベーシックス」は詳細な「ページネーション・マニュアル」になっている。その内容全体を本文中の見出しを掬い上げ番号付けした…

『組版原論』解体

組版原論―タイポグラフィと活字・写植・DTP ページと力―手わざ、そしてデジタル・デザイン作者: 鈴木一誌出版社/メーカー: 青土社発売日: 2002/10メディア: 単行本購入: 4人 クリック: 19回この商品を含むブログ (24件) を見るアジアの本・文字・デザイン―杉…

『組版原論』の組版データ

府川充男著『組版原論』(太田出版、1996年)は内容もさることながら、その本自体に注ぎ込まれた当時の組版知識・技術の最高峰、最先端が知れるという面でも大変興味深い。組版を論ずる本である以上、その本自体の組版の質も当然問われる。そのことに無自覚…

印刷史とタイポグラフィの勉強

府川充男著『印刷史/タイポグラフィの視軸』(asin:4916043820)を読みながらメモした基本語彙集。 用語 意味 備考 版心 袋とじの中央部 - 魚尾[ぎょび] 版心に摺られた黒いベタ - 中本[ちゅうほん] 天地約19センチ、左右約13センチ 一番ポピュラー 半紙本 …

図版は必ず左ページ?

府川充男著『組版原論』(asin:4872332725)の「タイポグラフィへの視線」(9–62頁)は豊富な図版資料を基にして「文字」をめぐる歴史、風俗、文化、文明を縦横に駆け巡る非常に中身の濃いもので、いずれここでも取り上げたい話題が満載だが、ひとつだけ特に…

印刷史の盲点

『印刷史/タイポグラフィの視軸』(asin:4916043820)の「近代日本活字史の基礎知識」で、府川充男氏は江戸期の書体に関して当時の身分差別の観点から次のように述べる。 江戸期に、庶民が明朝体の書物を読んだりすることはまずありえませんでした。つまり明…

10年前のタイポグラファー宣言:津軽海峡を渡った『組版原論』

「先生、最近ちょっと肩に力が入りすぎてるんと違います?これでも読んで、力を抜いた方が見通しよくなると思いますけど」とは言わないが、そんな空気に包まれて一冊の大型本が届いた。デザインを生業にしているタクオが、私の十年遅れの牛歩の歩みを見るに…

mmpoloさんの小さな大発見

mmpoloさんが街角で面白い発見をなさった。是非ご覧いただきたい。 「不思議な句点の使い方」(『mmpoloの日記』2008-03-20) 一目見て、ピンと来た。早速、府川充男著『印刷史/タイポグラフィの視軸』(asin:4916043820)にあたってみた。句読点が現代のよ…

明治二十年代、そして

最近二人の専門家から学んだ深く関連する興味深いことが二つある。二つともある重要な意味でウェブやブログにも関係すると感じている。 デザインとはあくまで「情報を公開する技術」である(主に鈴木一誌著『ページと力』から) 今日の日本語の文体と組版の…

ルビは偉大な発明である

私は活字のなかでも、なぜか昔から、ちっぽけで脇役扱いのルビ(Ruby Character)が好きだった。読みの難しい漢字に振ってあるよみがなだけでなく、著者独特の読み方を記したもの、あるいは本文組よりもルビ組の方が幅を利かせることも少なくない吉増剛造の…