いざ北へ2008その26 本のはなぎれの匂い

「シュンポシオン札幌」略して「札幌シュポ」改め「シュッポロ」には、何がウェブに恋してだ、それは血迷った恋に違いない。ホントの恋は本でこそ語られるべきである、という思いを抱いた方々もお出でになるでしょう。そういう方々には「山口文庫」でしばし本の迷宮世界に心身を遊ばせいただき、その後、思う存分、ウェブに恋するなぞとほざいている私を懲らしめていただきたく存じます。

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ウェブに恋して、と言いながら、他方ではじつは私は毎夜本と寝る。ウェブと寝ることはかなり難しいだろう。そのうち可能にはなるだろうが。それはあまり望まない。寝るのは本に限る。

一昨日、「枕頭の書」というタイトルでアルフォンソ・リンギスの『汝の敵を愛せ』の表紙写真を載せた。ただ、私の場合は枕頭の書はいつも複数冊あり、しかもお行儀よく枕元やランプ台に置かれているとは限らず、しょっちゅう布団の中にあったりする。というのも、文字通り枕になっていたり、胸に押し当てたまま寝込んでしまったりすることが多いからである。

いい本はいい匂いがする。これは本の隠された真実であると密かに思っている。その匂いを嗅ぎながら眠りに就くことほど幸せなことはない。

これは、府川充男著『聚珍録』全3巻。総重量8kg。日本広しと言えども、自腹を切って(痛かった)購入して、毎夜ベッドのなかでその印刷された文字の唯物的世界に浸っているのは、仮性活字中毒者の私とファジーさん(id:fuzzy2)の二人くらいではないかと想像する。他にいらっしゃったら、ぜひ連絡してください。私の場合は文字通りの枕になってしまっていることが多いので、府川さんにはちょっと申し訳なく思っている。

私なんかはとても顔向けできないある本物の本好きの人に言われたことがある。「三上さん、本で一番いい匂いがする場所はどこか知ってますか。それはねえ、ここ、「はなぎれ」ですよ。覚えておいてください。」「あっ、ええ、はい。」


『聚珍録』第三篇仮名の「はなぎれ」。いい匂いがする。ホントに。