スモールマガジン『ようこそ北へ2008』フラッシュバック4:危険な情動を飼いならす27歳

田中陽介(id:pho)に初めて会った。笑顔と笑い声がチャーミングな好青年だった。もちろん、かなり変な奴だった。27歳にしてすでにヨーロッパ各国、アメリカはもちろん、インドからつい最近の南米ペルーまでちょうど10カ国を放浪してきた男だ。しかし不思議とそんな本当はかなり重たい体験を微塵も表に出さない軽快感を備えていた。スキゾ・キッズ?ただ者ではない。その数字10に合わせて彼の人生に多大な影響をもたらした10冊の本を時系列に並べたビジュアル系プロフィール(http://f.hatena.ne.jp/pho/20080725224440)を下敷きにした「特別講義」が味わい深かった。

彼は**高校から**大学に進学し**に就職という普通なら人も羨む経歴と肩書きを持つ一方で、異文化に次々とダイブしつづけるワールドワイドな奥の細道をやり、さらに新しい目標を設定して、人生を深く耕そうとしている。彼の経歴や肩書きなどどこ吹く風の爺と、聴衆はそんな爺の教え子たちであることを熟知している彼は、自分の過去と現状を踏まえつつ、自分が今、これからどう生きようとしているのかを語ろうと奮闘してくれた。清々しかった。

ねえ、ねえ、ペルーで怖い思いしたでしょ。教えなさい。という三次会での爺の脅迫に彼はこともなげにあるエピソードを披露してくれたりするのである。それは普通はかなり危険な綱渡りだったりするのだが、彼には不思議なサバイバル嗅覚が備わっているらしく、100人の日本人が同じような場面に遭遇したら99人までは、帰ってこれない可能性が高い道を選んでしまうような岐路で、彼は本能的に安全な道を選ぶ。そんな抜群の安定感を持っている。しかもそれは自慢でもなんでもない。私が聞き出さなければ、彼にとってはごく当たり前のこととして処理されてしまう判断にすぎない。だからなのだろう。彼はそんな自分の天分を自ら進んで試練に晒そうとするかのように、時間を作っては危険な場所へと赴くのだ。なんて変な奴だ。危険な情動を飼いならす27歳。なんで27歳を強調するかというと、31日彼は27歳の誕生日を迎えたからである。その日の夜、6時からの一時間、サッポロビール園ケッセルホールで、坂東さん、かにさん、爺の三人で彼の誕生日をささやかに祝ったのだった。