トマムのコウモリ、追分のエゾシカ、千歳のキウス周堤墓群


調子に乗って両手ピースで一人浮く私。娘たちは冷静に片手ピースだった。

昨日午後、提出期限をむかえた仕事を完遂した後、何年ぶりか分からないほど久しぶりに家族揃って一泊旅行に出かけた。行き先は家族の希望でずいぶん前から予約してあった道央の勇払(ゆうふつ)郡占冠(しむかっぷ)村字(あざ)中トマムにあるバブリーな面影を色濃く残すアルファリゾート・トマム

トマム」の語源に関しては、「湿地、泥炭地、沼地」、あるいは「中間、真ん中」を表わすアイヌ語に由来するという説があるようだが、未詳。

以下、家族のプライバシーに配慮して、極めて私的な記録だけをここに残したい。

夕方トマムに着いてホテルにチェックインしたわれわれは何はさておき30分おきに波の立つ巨大なプールが目玉のスパハウスに向かった。家族が変形の浮き輪につかまってぷかぷか浮いている間、私は爺であることも忘れて、北島康介の泳ぎをイメージしながら、平泳ぎの特訓をした。何キロ泳いだか知れない。阿呆である。バーカみたい。全身の筋肉がぱんぱんに張っている。悪くない感じである。

午後8時過ぎた頃に、レストラン・モールであまりに空腹だったせいかやや焦って選んだ店内で、なんと二匹のコウモリに出会ってしまった。「トマ君とマム君」。受けた。入り口そばのガラスケースの中で飼われていた。複雑な気持ちの感動を経験した。


長女撮影。

翌朝(今朝)早く、午前5時に家族は冬はスキー場になる山の頂近くまでゴンドラで登り、雲海を眺めた。寒かったが、眺めは最高だったらしい。常軌を逸した平泳ぎの練習による過労のせいで起床できなかった私は置き去りにされた。馬鹿みたい。


午前7時からの朝食には間に合った。宿泊したホテルの棟から森の中をジグザクに走る全面ガラス張りの連絡通路を10分くらい歩いた先にある壁面ガラス張りの巨大な「森のレストラン・ニニヌプリ」でのバイキング。スケールがでかい。でっかいどう、北海道。

トマムからの帰路、夕張市の滝之上公園に立ち寄って、夕張川の竜仙峡を眺めた。「両岸に山が迫り、約3000〜1400万年前の海の証拠でもある礫岩・砂岩・泥岩の積層(タービダイト)が千鳥が滝を中心とした渓谷美を創りあげている。この千鳥が滝の落差を利用したのが北炭の滝之上発電所である。」*1

次に地図で偶然見つけた追分(おいわけ)町の鹿公園に立ち寄ってみた。もしかしたら、本物の鹿に出会えるかもしれないという淡い期待を胸に抱きながら。たぶん、鹿にちなんだ名前をつけただけで、実際に鹿が飼われているわけではなかろうという点で家族全員の悲観的観測はほぼ一致していたが、世の中何が起こっても不思議ではない。万に一の可能性でも感じられれば、実際にこの目で確かめに行かなければならない。鹿公園は閑静なキャンプ場、野外ステージ、そして沢山の鯉がぴちぴち跳ね、蓮の花が咲き乱れる大きな池も備えた立派な公園だった。その池から少し行った先に、高い金網で囲われた傾斜地の一角「えぞしかの丘」があって、なんと本物のエゾシカの二家族が閉じ込められていた!


本物のエゾシカに出会った興奮も冷めやらぬ頃、最後にわれわれは千歳市郊外の、これも地図で偶然見つけた国道337号線沿いにある正体未詳の「キウス周堤墓群」*2に立ち寄った。縄文後期( 約3000年前)の墓地の跡だった。その形状からちょっとアイヌのアフンルパル [ahunrupar]*3を連想した。

そういうわけで、心身ともに充実した小旅行だった。

ちなみに、この間、風太郎は一人で留守番をした。番犬としての役目を立派に果たしてくれた。散歩と食事の世話は近所のドッグ・シッターTさんに依頼した。一人残された風太郎は不憫だと思われるかもしれないが、実は風太郎はTさんのことが大好きで、Tさんに会えるなら、何日でも平気で留守番をするのである。