人生VSOP?

ちょっと古いけど、「人生VSOP」という「人生訓」を知りました。

20年前に先輩から聞いた人生訓です。私は飲ベエなので、VSOPの話はすぐに頭のなかにインプットされました。40歳代半ばを過ぎて、改めて思い出しながら自分の人生を考えるきっかけにしたいと感じています。

人生を年代毎に分類して目標を掲げると、VSOPになる。

20歳代は「Vitality」。若いうちは馬車馬のように働け!体力が続く限り、徹夜してでも仕事をしなさい。

20歳代にVitalityを充分発揮した後の30歳代は「Speciality」。専門家として発展する年代である。スペシャリストとして誰にも負けない「専門性」を磨きなさい!

40歳代は「Originality」。誰もが真似のできない新たな「自分の世界」を構築しなさい。

50歳代は「Personality」。誰からも一目置かれる人間性を養い、「あの人の言うことはひとまず聞いておこう」と言われる人間となることを目指しなさい!

このVSOPは、どの1つが欠けても完成することはないので、常に心に留めて人生を歩むように!

福井教授の一言コラム2000

へー、なるほど。孔子の名言を連想する人も少なくないと思います。

子曰。吾十有五而志于學。三十而立。四十而不惑。五十而知天命。六十而耳順。七十而從心所欲。不踰矩。

子(し)曰(いわ)く、われ十有五にして学に志し、三十にして立ち、四十にして惑(まど)わず。五十にして天命を知り、六十にして耳順(したが)う。七十にして心の欲するところに従って矩(のり)を踰(こ)えず。

論語:為政第二:4 - Web漢文大系

どちらも年代を文字通りに受け取る必要はないことを踏まえた上で、個人差がありますからね、このような人生訓には耳を傾けるべき真実が含まれていると言いたくなります。30歳くらいまでの過ごし方がその後の人生を大きく左右する、という感じでしょうか。要は30歳くらいまでは、がむしゃらに、徹夜を厭わず、勉強する、仕事する。「若いうちはお金を払ってでも徹夜をしなさい」という名言を聞いたこともあります。人生VSOPでは「20歳代にVitalityを充分発揮」がポイントになっているのが分かると思います。論語でも十有五から三十までの期間こそがポイントになっていると思われます。

このように、年代毎に相応しい「目標」を設定するというのは、複雑な人生をシンプルにする、というか、流されがちな人生にめりはりをつける、というか、人生を時間軸とカテゴリーによって情報デザインする、そんな好例とみることもできるでしょう。経済的な人生設計もおろそかにはできませんが、メンタルな指針を核に据えたライフ・デザインこそ、実は人間にとって最も大切な情報デザインのひとつではないかと思ったりもします。どうですか。

ちなみに、ジョン前田はかつて学生に向かってこう檄を飛ばしたそうです。

28歳で人間の思考は凝り固まる。それまでに、いかに柔らかくできるかが重要だ。
John MAEDA, Post Digital, p.69, asin:4757100523

「28歳」がどこから出てきた数字なのか、なんらかの科学的根拠に基づいているのか、そのあたりは不明ですが、「30歳」に近いですね。これもまた、教室で学生に向けて発せられたという状況や文脈を差し引いて受け取る必要のある言葉ですが、一理あるとは思います。要するに、戸籍上の、あるいは生物学的な年齢ではなく、自分の「30歳」なり「28歳」を設定して、そこまでは、自分の直観を信じて邁進することが重要である。そんな感じでしょうか。

自分はどうだったか、振り返ってみると、ここまで書いてきて、身も蓋もない話の結末になってしまいますが、実はそんな人生訓なんかに耳を傾ける暇も余裕もなく、次から次へと手当り次第につまみ食いみたいなことを続けていたような気がします。で、たまに、「これは!」というものが見つかってはしばらく没頭するということを繰り返していた。そういうものが今でも心の土中のあちらこちらに球根のように埋っているような感覚があります。自覚的ではなかったけど、自分なりの「30歳」あるいは「28歳」を無意識に設定していたような気がします。