Saudades Do Brasil: A Photographic Memoir
- 作者: Claude Levi-Strauss,Sylvia Modelski
- 出版社/メーカー: Univ of Washington Pr
- 発売日: 1996/09/01
- メディア: ペーパーバック
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「サンパウロ(ブラジル)へのサウダージ」なんて言うと、「冗談じゃない。何、呑気なことを言っているんだ」という声が現にサンパウロで体を張って生きている写真家の楮佐古晶章(かじさこ あきのり)さんから届きそうだ。
本物の喪失、失望、さらには絶望を知らないヤワな連中の戯れ言だ。「個」として「ここ」でしばらく生活してみろ。それからモノを言え。地球の反対側からそんな声さえ聞こえてきそうだ。
自分のこれまでの生き方を呪うような後悔、十字架のような心の傷、気が狂いそうになる孤独感、等々。そんな深い闇を彷徨う魂の歩みが明暗のグラデーションの隙間から蛇のように、虹のように立ち上がる気配が楮佐古さんの写真の魅力だ。
時にはサンパウロ(ブラジル)に対する恨み言を繰り出す楮佐古さんだが、それでもサンパウロを新しい故郷としてぎこちなくも愛していることが写真からも文章からも十分に窺える。写真家とサンパウロが深いところで共鳴し合っていると感じる。楮佐古さんは首を横に振るかもしれないが、その<場所>にはやはり「サウダージ」という言葉がふさわしい気がする。