- 作者: 宮本常一
- 出版社/メーカー: 毎日新聞社
- 発売日: 2005/03/31
- メディア: 大型本
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『宮本常一写真・日記集成』に掲載された約3000点の写真を見ることは、色んな驚き、衝撃に連続して襲われる、とびっきり素敵な体験だった。ひとつにはこんな風に驚いた。例えば、以前朝の散歩で見かけたツグミを記録した。
そのときツグミについて調べて気になっていたことがあった。それは、ツグミは鳥獣保護法で禁猟になって久しいこともあり、現在ではツグミを見かけても、捕らえて焼いて食べてみようと発想する人はまずいないだろうが、1970年代以前は、かすみ網を使って食用として大量に捕獲され、焼き鳥屋でごく普通に供されていたという歴史的事実である。しかしそれは読んで知ったまるで別世界の事実でしかなかった。ところが、『宮本常一写真・日記集成』上巻49頁、1956年11月11日(日)に、私にとっては非常に衝撃的な写真があった。その写真を見たとき、上の歴史的事実が生々しいリアリティを持って迫ってきた。
川口(愛媛県北設楽郡設楽町)で撮影された、民家の裏庭らしき場所で誇らしげな表情を浮かべた顔をカメラに向ける祖父と孫の二人。私の視線はまず祖父と孫の顔に向けられた。そして視線が降りて行った先に、なんと「獲物」があった。10羽ほどのツグミが一本の縄で首を括られて数珠つなぎになったものを、祖父は腰の前に、孫は右腕にかけて、どうだ! と言わんばかりに誇示しているように見えた。その祖父と孫の息遣いや、まだ生暖かいツグミの感触や匂いが直に伝わって来るようなリアリティは、写真を見ていることを忘れさせた。なお、同日付けの日記にはこの写真に関する言及はない。
追記。須藤功『写真でつづる宮本常一』では、この写真に次のような説明が付されている。
宮本常一が名倉で泊まっていた宿の主人の鈴木久世と孫。腰まわりに下げているのは渡り鳥の鶇(つぐみ)。現在は禁じられているが、昔は霞網で獲って食べた。(95頁)
- 作者: 須藤功
- 出版社/メーカー: 未来社
- 発売日: 2004/04/01
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*1:番号は宮本の10万枚余の写真コレクションにおける固有番号である。