My Garden

風太郎が死んで三ヶ月。ひとりの散歩にもだいぶ慣れてきた。歩くペースを意識的にかなり遅くした。ゆっくり、を心がけている。自然と目にとまるものが増える。シャッターを切る回数が増える。毎朝、小一時間の間に百枚くらい撮っている。以前の三倍だ。もちろん、ほとんどは写真としてはボツだけど、その瞬間瞬間の感応の記録としては貴重なものばかりだ。会う人にはできるだけ声をかけるようにしている。moreSmileの精神で。今となってはもう風太郎のことを話題にする人はほとんどいない。かつて風太郎の存在が私と町内の人たちとの間の距離を縮め、その後風太郎の不在がさらにその距離を縮めたかに思えたが、実はそこからが私の風太郎からの自立の始まりなのだと改めて思い知る今日この頃である。最近では「手持ち無沙汰だねえ」がせいぜいで、ほかは花の話など差し障りのない世間話に終始する。それ以上立ち入ることはなかなか難しい。写真を撮ることも出来ない。無理をするつもりは毛頭ないが、それが当たり前だとは思いたくない。今や、想像のなかでは、毎朝歩いて見て回る範囲の町内全体が完全に私の庭になっている。しかし、現実には多くの主人がいて、彼等との付き合いには目には見えない厚い壁があるのを痛感する。結局は、この土地に根を下ろすことなどできない通過者にすぎないのだろうかと思うこともある。