まるでキリコのような...

珍しいことに、怠惰な私が新聞連載小説『聖なる怠け者の冒険』(森見登美彦作/フジモトマサル画)をまるで紙芝居のような言葉と絵の共演と次を大いに期待させる終わり方=続け方に惹かれて一回も欠かさずに律儀に読み続けている。そう言えば、昨夜藤原新也に触れて書いた「懈慢意識に目覚めている阿呆者」はどこか「聖なる怠け者」に通じているような気がする。

左18(6月29日)、右19(6月30日)

昨日の第18回では、河原町通を渡り、まだシャッターの下りている早朝の静かな商店街の描写に「かに道楽」が出てきたことに感動した。毎回少しも手を抜かない(当たり前か)、隅々まで独特の柔らかい線が几帳面に描き込まれているフジモトマサルさんの絵に改めて感心した。今日の第19回では、寺町通りにある「スマート珈琲店」の店内の様子が床や壁の木目まで丁寧に描き込まれていて感心した。ただ几帳面というのではない。キリコを連想させるような、どこか懐かしいような、しかしなぜかちょっと不安にもなるような不思議な作風の絵だ。