スマートな地図

新聞連載小説『聖なる怠け者の冒険』(森見登美彦作/フジモトマサル画)は次々と私の関心の壺を刺激する。話の展開からして当然と言えば当然なのだが、「第一章 仮面の男 23」では、とうとうフジモトマモルさんによる挿絵は地図になった。ちょっとびっくりしたが、深く共感した。路地が入り組んだ京都の町で「聖なる怠け者」こと小和田君が、「仮面の男」との浅からぬ因縁を感じさせる謎の女性玉川さんに追われる場面は、地図がなければついていけない。

 朝日新聞2009年7月4日夕刊より

こうして、小和田君がなぜか玉川さんに追われてたどったコースと要所が頭に入り、小和田君の身になって逃げる気持ちと追っ手をかわすために方向転換する体感なども十分に味わうことができる。小学校、スマート喫茶店、映画館、ロフト、蛸薬師、三嶋亭、鰻屋「京極かねよ」、河原町OPAの位置関係がよく分かる。

それにしても、この地図はアバウトでありながらも、ちゃんと通りの太さの違いや鴨川や水路の太さの違いが再現され、袋小路や行き止まりなども緻密に描き込まれていて感心した。スマートな地図だ。