村崎太郎さんへ


 朝日新聞朝刊2009年7月29日


ボロを着た王子様

ボロを着た王子様


「中上は部落ちうもんをわかっておらんなあ。中上の部落認識は暗くて浅いのや」と中上健次の部落認識を喝破した宮本常一は、山口県被差別部落出身の猿回し師・村崎修二に「一番うしろを歩け、地獄を歩け」とよく言った。

村崎修二の甥にあたる村崎太郎さんは部落出身の発覚に怯え、鬱に苦しんだ。今春出版した自伝『ボロを着た王子様』(ポプラ社、2009年)で過去の苦悩を曝け出したが、故郷の名までは明かせなかったという。猿回し復興に尽力した宮本常一の存在と言葉を村崎さんは知っているだろうか。