時の狭間2:十和田観光電鉄線


JR三沢駅を降りたら、Miss Veedlが出迎えてくれた(→ ミスビードル号物語)。十和田への接続はローカル線の十和田観光電鉄線である(→ 十和田観光電鉄)。かなりくたびれた駅舎といい、割れた窓ガラスをガムテープで補修した小さな駅長事務室といい、ロッカーに入らなかった大きな荷物を快く駅長室で預かってくれた駅長さんといい、駅長さんはパンチで切符を切る改札係も兼ねていて、三沢駅の仕事をひとりでさばいている、そのすべてが日本全体を覆う浅く早い流れから取り残されつつもマイペースで淡々と深くゆったりとした時の流れを生きていた。とても気持ちが良かった。時速40キロで走る二両編成の7901番車の運転士、栃木さんはとてもとても几帳面で丁寧な運転をしていた。走行音と踏切音と駅名アナウンスの声をBGMにして車窓に展開する懐かしい風景に魅せられていた。「ふるさと」という駅があった。ああ、こんな偶然もあるのか、と心が震えた。無意識に不在の故郷の中心のような場所へと吸い寄せられていたのかもしれないと思う。荒唐無稽な話だと自分でも可笑しくなるが、十和田では予想もしなかった桜田酒店のご家族との不思議な出会いもあったのだった。